第2話

俺のように外からぶらりとやって来た可能性もある。


いろんな思いが頭の中を巡ったが、俺は最終的にこう言った。


「ここに住んでるんですか?」


男は答えた。


「ああ、住んでるけど」


「こんな汚いところにですか?」


男の顔が強張る。


しまった、と思ったが、もうおそい。


男が言った。


「こんな汚いところねえ。それじゃああんたは、こんな汚いところじゃなくて、もっと清潔なところに住めと言いたいんだな」


「……いや、こういうわけでは」


「わかった。ならあんたの言うとおりにしよう」


男はそう言った後、目の前から一瞬で消えた。


俺は数秒固まった後、その場を走り出した。



「ただいま」


アパートに着き、そう言った。


俺は一人住まいだが、いつの間にか部屋に帰るとそう言う習慣が身についていた。


当然のことながら、いつもは返事がない。


が、今日はあったのだ。


「おかえり」


視線の先には先ほどの大男が、ソファーに深々と腰を掛けて笑っていた。



         終

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異住人 ツヨシ @kunkunkonkon

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