第9話れいの物件。


     ◆   ◆   ◆


 男神の表情が瞬間、凍り付いた。


「女神、何の真似だ……」


「あなたが想像したとおりのことです」


「むお! この風は……やめろォ!」


 神に風は付き従うもの。女神はそれを体現しえる唯一の存在と言えた。なぜなら、男神は風と対極にある存在だったからだ。


「ふっふはは……」


 何がおかしいというの? 目を見開く女神に男神は言う。


「先陣切ってやってきたもののふの王者がそれしきで参ると思ったか」


 確かに。いかづちと風雨にさらされて危険なのは味方も同様。


「しかし、おしいぞその力……どうだ、私と共に来ないかね」


「馬鹿な」


 一言で切り捨てる。それは剣の女神にふさわしい物言いだった。彼女は圧倒的力を見せつける。それでもこの男神は獰悪どうあくに笑むのだ。――笑むことが、できるのだ。


     ◆   ◆   ◆


(たたみかけるのが特徴ね)

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