第5話後付けでいいんだ、後付けで。

「我こそは剣の女神」


 と、彼女は名乗り出た。


 流れるような明るい髪の毛に西日がふりかかり、血にも勝る紅。すっと通った鼻梁は知的で気高く、瞳は茶水晶のごとく。


 山間の奥に降り立った姫神のもと、戦いの気にあふれた有志が現れ、手に手に松明を持って、各地へ知らせにはせた。その肌は白、黄、赤、黒。タトゥーを施した者もいる。頭髪は短く刈り込んだ者もあれば、性がわからぬほど整えた者もおり、いずれも若き十二、三歳の少年少女たち。戦闘訓練に明け暮れ、姫神が降り立つのを地上で今か今かと待っていた。





「わっはっはっはー! 出たな姫神。散れ、小僧!」


 と、男神はナタをふるい、使者をその手にかけた。


 彼は血塗れたナタを放りやり、重々しい金属の鎧を持ってこさせた。


 


 石の神殿でたたずむ女神の前に、小枝のように華奢で、やわらかな面差しの少年が現れた。


「女神、私も戦います」


「おまえは無理です。さがりなさい」


「せめておそばにいさせてください」


「許しません」


 ショックを受ける少年。


 すがりつくその手を、女神はやさしく、けれど明確に振り払ったのだった。


「そのようにやわらかい手をして、誰を、何をするつもりなのです」


「女神、私はあなたをお守りしたくて……」


「おまえを戦場に連れていくことはできません」


 厳しい選別の末、連れて行くのは精鋭に決まった。


【だが少年は言いつのる。


「女神、私をお連れください」


「無駄なことを……」


「だって私は、あなたを愛するために生まれてきたのだから」


「いけません」】


「そ、そんな……女神」


 少年は、崖から滑り落ちた。落ちた谷底で、あっけなく川下へ流されていった……。


【「なんと……せめて命が無事でありますよう……だれか、あの少年を救ってやって」】





(この誰かっていうのが誰か、不明なんだよな。他力本願な姿勢も気になるところ……)

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