第2話 草に埋もれていたもの
その頃の私は近所のバイク屋に入り浸っていました。そのお店は割りと広くて店長も若かったので、いつ行っても若い常連が2-3人いるような居心地のいい場所でした。近くにある高校の生徒も出入りしてましたが私もそこのOBです。
お店が企画するツーリングもありましたが、暇な若者が毎日集まって来るわけですから突発的にあちこち走りにいってました。大垂水、平山坂、船の科学館、水産、ランドにヤビツにバイオなどなどレーサーレプリカの全盛期です。
8月の或る日の夕方、特に人が集まり店を閉めたあとどこか行こう って話になったんですが、バイクが修理中のヤツが2人いたのと蒸し暑かったので、車でドライブに行くことになったんです。
私の車とあと2台、合計3台7人で奥多摩のほうに出かけたんですが、途中、コンビニで休憩した時に「不思議な場所」の話が出たんです。
そこは山中の一本道にある脇道で、入り口に「門」が建っててバリケードで封鎖されてる、あの奥には何があるんだろう?
場所を聞くと私も存在は知っていましたが、入った事はおろか停まったこともない寂しいところです。「門」ていうのも普通の門ではなく、朱塗りの柱で組んである大きなヤツで普通の家とかでは絶対ありません。
気味が悪いので一人二人では行こうなんて思わないんですが、その時は7人もいたので気が大きくなってて行くことになったんですね。
1時間ほど走って着いた現地は峠からの下り坂の途中なんですが、問題の脇道は門をくぐってから急な登り坂になっていて、その先がヘアピンカーブになってるのが見えます。
今だったらグーグルアースとかである程度分かるんでしょうが、その頃は行って見なければ先に何があるか分からないんですよ。
改めてよく見ると・・道路脇の側溝の蓋まで外されていて、バリケードは単管パイプでガッチリ組んであります。車ではそれ以上行けないので全員車から降りて歩いて脇道に入っていきました。
辺りは真っ暗で月もなく、突発で来たので懐中電灯が1本あるだけ、ダラダラと馬鹿話をしながら上っていきました。
500メートルくらい入ったところで急に300メートル四方くらいの広い場所に出ました。平坦で端のほうに倉庫(?)のような建物が1棟建っているだけです。
皆拍子抜けして「え?これだけ??」みたいな空気が流れました。
ぱっと見には終点みたいだけど、広場の向こう側に道が続いているかも?ってことで懐中電灯を持っていたヤツと私とあと1人の3人は、入ってきた方向とは反対側の森を目指して広場みたいなところを横断し始めたんです。
遠目には平坦に見えた広場ですが、近くに行ってみると一面にツル草が生い茂っていてデコボコでした。そこに3人で分け入ったんですが草の下が空洞になっている所とかがあって、落ちると腿辺りまで潜るので大変でした。盛り上がっている所を乗り越えながら進みました。
そして・・・何回目かに空洞に落ちた時、はっと気が付いたんですよ・・
デコボコの下が・・・全部 墓石 だってことに・・・
血の気が引きました、3人とも・・・
周囲300メートルくらい、全部崩れた墓石なんです、その上に厚く草が生い茂ってるんです。
これは大変なところに来てしまった、早く・・早く出なければダメだ・・周囲の気温が一気に氷点下に下がったような寒気に襲われました。
それから、そーっとそーっと慎重に盛り上がった所を踏まないようにして残りの4人がいる所に戻りました。
タバコを喫ったりして笑いあっている4人に理由も告げず、半ば強引に引っ張って道路の方に戻り始めた時、後ろを見ると・・・広場の辺りがボンヤリ明るいんですよ、明かりなんかどこにも無いのに・・・
そこからはドンドン早足になって、最後は走りながら車に戻り1番近くのコンビニに着くまで、何を聞かれても返事が出来ませんでした。
あそこは一体何だったんでしょう?今でも疑問は湧きますが再び行ってみたいとは決して思いません。
白昼夢 @ujin
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