自然な台詞
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「説明が必要な地の文は未熟かもしれないが、説明が不要な台詞も未熟かもしれない。何でもわかりやすければいいというものではない。処女が初体験の時に男に対して、間違わないよう細かく、エロワードで指示をしてきたら冷めてしま……わないな。それは、有りだ」
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■解説
たまに出てくる格言というより迷言である。
いくら多くの真理にたどり着いたアーダルトも人である以上、まだまだ迷いもある。きっとこの格言も、言いながらいろいろ妄想しているうちに、「有り」になってしまったのだろう。
喩えの方はともかく、前半部分について少し解説しよう。
地の文は、基本的に読者に情報を正しく伝える役割を持たなければならない。
ただし、前々からアーダルトも語っている通り、文字情報で全てを正しく伝えられるわけもなく、あくまで読者の想像に頼る部分は大きい。
それでも、たとえばその地の文で表すシーンが、作者が想定するものと、読者が想定するもので大きく乖離していてはいけない。
ましてや、読者がそのシーンを想像できず、作者の説明を別途必要とするなどというのは問題がある。
それが「説明が必要な地の文は未熟かもしれない」という部分だ。
ただし、「かもしれない」というところが微妙で、作者が意図的に行っている場合もあるだろう。叙述トリックなどは、その最たる例だ。何事にも例外はある。
それに対して、台詞は少し違う。
本来、日常会話はさほど理路整然していないのが普通だ。感情に左右され、支離滅裂になることもあり、言いたいことをうまく伝えられないこともあるだろう。小説の登場キャラクターのように、決め台詞をばっちり決められる人は少ないはずだ。
特に別の解説でも書いたが、小説でよくある状況説明的な台詞など、通常の日常会話でめったに言うことはないだろう。
台詞は、わかりにくいのが普通なのである。
わかりやすすぎる台詞は不自然なのだ。
ただし、実際の会話と違って、小説の中でわかりにくい台詞は、本当に意味が全くわからなくなってしまうことも多い。日常会話の台詞をそのまま使うことも難しい。
このあたりは、加減の問題であろう。
「登場人物の感情は、登場人物が語るより、読者に想像させた方が面白い。そこに齟齬はでるだろう。しかし、その多様性もまた登場人物の魅力なのだ」
アーダルトがこの格言とともに語った言葉だ。
キャラクターの感情は読者が読み取るべきものだということだろう。その際に、キャラクター本来の意図をくみ取れない読者も出てくるかもしれない。しかし、それもまたリアルなキャラクターと読者の関係性なのかもしれない。
もちろん、あまりにも多くの読者が意図を読み違えるならば、それは少し問題がある。また、それが物語の根幹たる主張(テーマ)であるなら、読み違えは避けたいところだ。
ちなみに最後にアーダルトは、下記のような言葉でこの説明をしめている。
「……よく考えたが、やはり処女の初々しさは捨てがたい。それは最初のころにだけ味わえる、咲きたての花の蜜なのだから。……エロワードはその後に楽しもう」
エロワードも捨てがたいらしい。
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