面白さと文章力
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「面白さと文章力はイコールではない。文章力が高いからと言って面白いとは限らないが、文章力が低すぎれば面白さにたどり着けない。これは、性技に優れていても持久力がなければ絶頂に導けず、持久力があっても性技が足らなければ絶頂に導けないのとそっくりである」
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■解説
生前、アーダルトは「作品を読んでも、いの一番に描写がどうの、表現がどうのということを語る者に限って、その作品の面白さについて語ろうとしない」とこぼしていたが、解説者たる私も耳の痛くなる話である。
文章力は確かに作品の面白さに影響する。
だが、面白さというのは、独立した要素だ。文章力が高くとも、物語や構成に面白さがなければ、宝の持ち腐れである。また逆に文章が下手だからと、そこに眠る面白さの要素までつぶしてしまうのはもったいない。
この格言では、そのようなことを言いたかったのかもしれない。
ちなみにアーダルトは「愛があれば絶頂に導ける」とも言っていたが、ライバルの文学者たちは「経験がない、夢見がちな男が言うきれいごとだ」と冷笑を送ったという。
しかし、彼は経験していないからこそ、そこに「愛」という美しい夢幻を見いだし、文学においても「自分の作品を書くときに愛をもて」「他人の作品を読むときに愛をもて」、そして「面白さとは作品を好きになること。すなわち面白さとは愛だ」という素晴らしい言葉を後世に残せたのではないか。
ただ晩年に語った「私は童貞でも、愛を知っているから悔いはないんだからね!」という言葉は、同じ愛を語った言葉であるにもかかわらず、なぜか負け惜しみとして後世に伝わってしまっているのが残念だ。
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