奥さん自慢だけど、何か?


少し、

かれていた事はみとめるよ。


無事、

生まれて来てくれた子供は、

元気一杯いっぱいな女の子で。


しかも、

彼女にて色白の、

とても可愛かわいい赤ちゃんだった。

(将来はきっと美人になる。

・・よめにはやらないよ?)



それだけでも、

とても幸せなのに。



家に帰れば、

我が子とむかえてくれる奥さんも、

雪のように白くて艶々した肌の、

優しい美人さんだしね。

(のろけ?

奥さんの自慢じまんの、何が悪いのかな?)


相手があまり、

腕の立つ奴らではなかった事も原因だけど・・


でも、

言い訳にしかならないな。


結局は、

周りを見ていなかった私のミス、

なんだからね。


○    ○    ○    ○    ○


今日は、

レンデルム大森林にある、

『レンデルム神殿』での仕事だった。


ここは私達にとって、

第2の家のように居心地のいい場所だった事も、

油断につながったのかもしれないね。


何時いつもは、

あま冒険者おきゃくが来ないんだけど、

今日は何故なぜか大盛況せいきょうで。


体力がり、

強制帰還きょうせいきかんする仲間達が相次あいつぐ中・・

それは起こった。


5人組の冒険者と戦闘が始まり、

私がその内の1人と切り結んでいると。



ふと、

目に入ったある光景。



一緒に戦っていた1人のワゾ・ムニムが、

3人の冒険者に囲まれていたんだ。


たった1人を取り囲み、

楽しそうに甚振いたぶるその姿は・・

嫌悪けんお感しか、いだかせない物だったよ。


その姿にまゆすがめた、

次の瞬間。


私の体から、

音を立てて血の気が引いた気がした。



もう1人いた冒険者が、

彼の背後からそっと近づき・・

その体に、アックスを振り下ろそうとしていたんだ。



無防備むぼうびな状態でらえば、

怪我けがをしてしまう!!』


そう思った私の体は、

自然に動いていた。


まじえていた相手の剣をはじき飛ばし、

其方そちらに向かって全力で走る。


ワゾ・ムニム君が、

自身に掛かったかげに気付いたのと・・

私がその体を思い切り突き飛ばしたのは、

ほぼ同時だったよ。


「ぐッ・・!!」


咄嗟とっさに体をひねった事で、

直撃ちょくげきけられたけど。



私の右腕は・・

かたの部分から、切り離されてしまった。



まぁ、

私の腕は簡単かんたんなおせるから、

何の心配も無いんだが。

(我が家の可愛かわいい愛犬が、

かじって遊ぶ事もあるしね。)



ただ、1つ。



・・いとしの奥さんからもらった腕輪が、

着けていた右腕と共に、

その場に残されてしまったんだ。


体の損傷そんしょう感知かんちした呪符カードキーが、

強制送還きょうせいそうかんために動き出し・・私の体は、

その場から消え始める。


(待ってくれ!!

あれだけは、あの腕輪だけはひろわせてくれ!!)


懸命けんめいに、

残された左腕を伸ばしたけど・・


腕輪を回収する事は、

出来できなかったよ。


「スケル・ナイトの腕だ!」


「魔法の杖の材料に、

高く売れるんじゃなかったっけ?」


「持って行こうぜ!」


「でも、

禁止されてる・・」


そんな冒険者やつらの言葉を、

最後までく事無く。



・・私は、

くやしさで歯を食いしばる事しか、

出来なかった。



○    ○    ○    ○    ○



「本当に、情けないなぁ・・。」


あの後すぐ、

病院に強制帰還きょうせいそうかんされた私は。


そのまま『軽度けいど骨折こっせつ』で、

1日入院になった。


同僚どうりょう達に怪我けがをした事を知らされ、

あわててけつけてくれた奥さんに、

私は事の顛末てんまつを聞かせたんだ。


あまりの不甲斐ふがいなさに、

話しながら落ち込んでしまった私の背を、

彼女はなぐさめるようにポンポンとたたく。



そして、

言ってくれたんだ。



「あの腕輪は、

貴方あなたの身の安全をいのっておくった物。

貴方あなたの命が無事ぶじだったのなら・・

私は、それでいいの。


だって、

大事な夫の命よりも・・大切な物なんて、

世の中にはないのだから。」


優しい声で、

微笑ほほえみながら言われたその言葉に・・

私は、不覚ふかくにも泣いてしまったよ。


「あらあら、

大きな子供みたいね。」


そう言って苦笑する彼女の手を、

感謝を込めてそっとつかむ。


がとう。

・・私の最愛の奥さん。」


無事ぶじで良かったわ。

・・私の、最愛の旦那だんなさま。」


2人で手を取り合い、

そう微笑ほほえみ合っていると。


「「「「チッッッ!!」」」」


と、

複数の舌打ちが辺りに響いた。


「のろけんなら、外行けよ!!」


病室ここにいる他の奴

全員独身だっつーの!!」


「なんでボク、

足なんて怪我けがしちゃったのかなぁ~・・。」


「院長先生ー!!

病室変えてくださーい!!」


遠くから院長の


「精神力がきたえられるねー!」


ははははは!


なんて、

さわやかな笑い声が聞こえるけど。


私はただ、

事実を言っているだけなんだ。


もう1度言うけど。



愛する奥さんの自慢じまんの、

何が悪いのかな?

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週に2日はドラゴンです 空木真 @utugimakoto

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