一章 十一話 殺人事件
第一章「再会」
第十一話 殺人事件
國崎班は事件の現場に到着した。
現場は小さな屋敷。大金持ちとはいかないが、中間層よりはかなり資産を持っている印象を受ける。
「おっ、ALPの皆様のご到着か」
スーツ姿の男が三人。その中でもリーダー格のような男が発言した。
「まあ、レッツェル主義者が関連している可能性がアリ、なんて言われたらな。警視庁捜査第一課さん?」
「ちっ、減らず口は相変わらずだな」
「お互い様さ」
「あれ!?お知り合いなんですか!?」
阿藤がデカい声をあげる。
「現場くらい静かにしてくれないか……」
「あっ、すみません……」
「おやおや、部下に教育がなっちゃいないな?さすが、『変人の寄せ集め』の國崎班だ」
「何ですって!」
「落ち着いてください阿藤先輩。國崎先輩に恥をかかせるだけです」
「おっ、冷静な奴もいるようだな」
「まあ、優秀な部下なんでね」
「ふん、まあいいだろう」
「皆、彼は鈴木行久(ゆきひさ)。内戦時代俺と同じ軍に所属していた。」
「俺の方が4つも年上なんだがな。警視庁捜査一課所属の鈴木だ。よろしく」
彼の挨拶を皮切りに残りの二人も挨拶をする。
「私も捜査一課所属の若城明人(わかきあきひと)です。よろしくおねがいします」
「俺も同じく捜査一課所属、先達良治(せんだつりょうじ)だ。よろしく」
國崎班と警視庁捜査一課からの面々と挨拶が交わされた。
警視庁からは8人現場に派遣された。刑事3名、検証鑑識に5名という具合である。
警視庁とALPには隔たりがある。警視庁は試験や訓練を受けてきたものがほとんどの中、ALPは内戦時の生え抜きが大半を占めている。新世代は試験なども取り入れた採用方式をとっているが、未だにそのような差別意識を持っているものが警視庁には多い。
また、予算も違う。ALPは半分「軍」のような存在であり、治安が低下している現在の日本において重要な役割を担っている。そのため装備も充実させる必要があった。ぽっと出の組織が、いきなり警察の予算を上回る予算が与えられた。(表上は警察の内部組織という体になっているが、実態は警察との連携はない独立した組織となっている。)この事実が、警察で働く人間のプライドを大きく傷つけた。
「彼らが、犯行時刻に屋敷にいた人物だ」
「執事を務めさせております、松田繁(まつだしげる)と申します」
「ハウスキーパーの昴流諒子(すばるりょうこ)です」
「同じくハウスキーパーの豊田真子(とよたまこ)です」
國崎が尋ねる。
「執事とは、今どき珍しい肩書ですね。ハウスマネージャーなどと呼ばれたりしていますが」
「はい、それに関しては理由がございます。私は会社に属しているわけではなく、個人で雇われたものです。家主の的場祐樹(まとばゆうき)様の趣向で、『ハウスマネージャーなどでは趣がない』ということで、執事という肩書なのでございます」
「個人で雇われた?というと?」
「國崎。応接室を使って事情聴取をする予定だ」
「ああ、すまん」
「では皆さん、これから事情聴取を行いますので」
鈴木が三人を応接室に行くよう促す。
「やはり、このような案件は向こうの方が手馴れていますね」
「まあ、役割が違うからな」
「國崎!詳しい状況は先達から聞いておけ!!10分後の事情聴取までには把握しとけよ!!」
「早いですね……」
伍快が驚いたような、呆れたような声を出す。
「まあ、仕方ないさ。先達君、頼むよ」
「ええ、では状況説明をさせていただきます」
先達の話を聞きながら國崎は考え事をしていた。
「(松田繁……どこかで聞いたような……)」
だが、思い出せずにいた。
「(根拠があるわけじゃないが……、嫌な予感がするな。ただの殺人事件で終わらなければいいが。)」
國崎は一抹の不安を抱えていた。
第十一話 了
國崎の戦い 紅茶 @milktea1140311
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