第63話 愛のベーゼ

 べ、ベーゼを……。

 くちづけを……。

 この仮の姿、四元豚ちゃんに、心の美しいネコーコ・ハルミ姫より、愛のベーゼをお願いいたしまする。


 ぶ、ぶひー。


「え? いやだ、四元豚ちゃんったら」


 おお、ベーゼをしたい意思が伝わったか。

 流石、愛の力なりよ。

 愛のないサスケヒゲゾー伯爵にはないだろう。

 はっは、羨ましかろ。


 ぶっひぶひぶー。


「なんだ、長い鼻から口を尖らせて。気持ち悪いぞ、豚」


 ケツをペーンと叩かれた。

 ――その時だった。

 振りケツ魔法が偶然発動してしまった。


 あっきょんぴーん……!


 そこから、サスケヒゲゾー伯爵の作った魔法陣にいるネコーコ・ハルミ姫の鳥かごまで飛ばされたから、驚いた。

 がしっと必死で鳥かごにつかまった。


「あああ、四元豚ちゃん!」


 ぶひ!


 段々ぶひぶひしか言えなくなって来ているから、早く話せるようになりたい。

 これでは、試合に勝っても、姫を困らせるかも知れない。

 どうしたらいいのか。


「あの、四元豚ちゃん……。あのね」


 か、顔が近すぎないですか?


「あのね、ここに頬を当てて」


 そ、そうですか?


「おーい、何やっちょる? 降りて来いよ。結界張ってあったのだがなー」

 下から目線の伯爵は、あまり偉そうではないと、初めて思ったよ。


「邪魔しないで、ぶうー!」


 ああーん、怒った顔もかわゆいー。


「だから、ここに。ね?」


 はい。

 頬を当てました。

 あちー!

 結構この鳥かごは熱いな。

 焼かないでくださいよ。

 ちょっと油断していた時だった。


 ……ちゅっ。


 うお、うお、うお……。

 セクシー・ド・ヨンゲーンの初キッスでは?

 しかも熱い柵を乗り越えて、姫……。

 感謝です。

 このまま、固まってしまいました。


「四元豚ちゃん、あなたは本当に普通の豚さんなの? 私、豚肉を食べないで来たわ。守ってきたものがあるの」


 姫の両の瞳から、真珠のような美しい涙があふれて来た。

 そして、柵越しに涙が伝わって来て、張り付いている頬を濡らした。


 うおおおおおおおお……!


 ビシャー!


 雷に打たれたようだった。

 サスケヒゲゾー伯爵の方を向いて決めた。


「妬かないでくださいよ」

 

 >分岐<


 A さっと泳ぐように舞い降りる。

   第48話へ。https://kakuyomu.jp/works/1177354054883918985/episodes/1177354054884268947


 B 伯爵からヤジが飛んできた。

   第66話へ。https://kakuyomu.jp/works/1177354054883918985/episodes/1177354054884464946

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