第9話:長い夜


渡が叫んだ。


「…え?」


彼女の顔に、ぴぴっと何かが掛かる。


体をベットごと軋ませ、肩から胸、そして脇腹にかけて血を吹き上がらせ、渡が叫んだ。


病室の外が騒がしくなる。


「そんな…嘘……渡!」


渡は白目を向いてびくんびくんと痙攣けいれんし、口に溜まった血から泡をぶくぶくと立てている。


「ちょ! 誰か来いよ!

 渡が! 渡が死んじまうだろうがぁああ!」


ナースコールを押しながら、彼女は渡におおかぶさり、口と口を重ねる。

そして喉に溜まった血を吸い上げ、吐き出し、また吸い上げ、吐き出す。


「がはあ! ぜはぁ! ぜはぁ!」


そして渡は呼吸を再開した。


続いて病室に入ってきた医療人が即座に渡をその場から移送し、渡は緊急治療室へと運び込まれる。


長い夜が始まった。


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