模擬試合(戦闘描写)
エルティナの使命を受けたブラックは、一旦天界から離れいつも住んでいる世界(リテリアル)に戻ってきた。
そこは魔法使い達が集まる叡智と魔法によって構成された超巨大都市。そしてその中でもひときわ目立つ一番高い塔の屋上、そこが聖賢者、つまりブラックらの住む場所である。
「それはなんとも面白そうな話ですね」
「見てる側からすればな」
「だとしてもクロツグ様の勇姿をしかと見せつけられるのでしょう?」
白銀に輝く髪の少女、百合華は言う。
クロツグとはブラックのことだが、彼と親しい人物は大体こっちで呼ぶことが多い。そのことについてはブラックもどうでも良いので、自分だと分かれば特に気にしていない。
「今回は一種の任務だ。しかもエルティナ様からによるな。だからお前は連れて行けない」
「うっ、そうなのですか……」
百合華は少し残念そうに肩を落とした。行きたかったのかもしれないが、どうせ外から見ることしか出来ない。一緒にいたいだけの彼女にはあまり意味の無い行動となる。
「でも行くまでに時間は少しありますよね?」
「あるが、どうするつもりだ?」
彼女は彼の前に立つと意気揚々と語る。
「模擬戦を行ないましょう!いくらクロツグ様とは言えそのような場所にあなたを傷つける輩がおるやもしれません。それとついでに力の調整をしておきましょう」
「まるで俺が傷一つ付かないとか言いそうな言い方だな」
とはいえ、自分が並みの攻撃で傷つかないのは事実だし、例え怪我しても運命のパラドックスが勝手に働くから傷か付かないのは実質的に同じこととなる。
それにエルティナからは本気は出さなくても良いが、全力は出すかもしれないと聞かされている。だとしたら自分の持て余す力を確認しておくのも悪くない。
「まあ、いいか。で、誰が相手になるんだ?」
「それは、お楽しみです。でもせめてクロツグ様の動きに付いてこれる方でないと練習にはなりませんね」
細かいことは気にしないし、気にしてもしょうがない。
ブラックは意気込んで出て行く百合華の後ろ姿を見ながら、この賢者の塔周辺にもある闘技場に一足先に向かうことにしたのだった。
◇
トーナメントの本会場と同じくらいか、それより少し大きいか。
ここの闘技場にはブラックと幻影で作られた闘技場専用の訓練相手がたくさん控えていた。
「人じゃなくやはりこっちか」
「そうですね、考えたのですけど、クロツグ様の全力の動きに付いてこれるのってやっぱりいないんですよね。なので自由に能力を付与することの出来るこれにしました」
この幻影達は様々な相手を予想して一定範囲内で設定をすることが出来る。もちろん闘技場の練習システムなので、死ぬことはないが、人のような動きをするので強く設定しすぎると通常の人では倒せなくなってしまうほど強化も出来る。
まあ急ピッチで呼び集めるのも難しいだろうし、これだけ相手を用意しただけでも十分だろう。練習するだけなら問題ない。
「まあいい、何時呼ばれるやも分からんからさっさと行なうか」
「あっ、クロツグ様。鬼神の能力だけは絶対に使わないでくださいね。」
そう思ったブラックは早速、右手に七剣フィリアス、左手に大杖といつもの様子見の形を取る。
◇妖力&七剣フィリアス◇
ブラックは一人目に対し剣を抜き放つ。
相手はその間にもの凄い早さで彼に迫ってきていた。
時速200kmは越えるだろうか、どちらにしてもこの狭い闘技場の中では一秒も必要ない。
「妖力、流動操作」
いきなり妖力を使わせるとはどれだけ強く設定したんだよと思いながら、自分の妖力を発動させる。
刹那、相手は固まったように動かなくなっていた。それだけでない、場外から見ている百合華や他の幻影もピクリとも動いていない。
これは時を止めたわけではなく、時の流れる流れを極限までゆっくりにしたのである。そのせいで時が止まったように錯覚してしまうのだ。
ブラックは目の前までゆっくり歩いて行くと、その剣で一撃、縦に真っ二つに切り裂いた。
これにかかった時間はわずか64の23乗分の一秒。光さえ点として捉えることが出来るほどの短さだった。
◇三杖ドルドロス◇
次の相手は簡単に言えば超絶強化された個体だった。攻撃上昇、攻撃無効、魔法効果無効、速度上昇、触れば呪いが発動する効果、精神強化、即死無効、再生効果付与などその他200、ありとあらゆる効果が詰め込まれた恐ろしい敵だ。
これでは人どころか神でさえ敵わない。
だが彼はため息をつくしかなかった。
「百合華、さすがにこいつはなめすぎだと思うぞ」
「で、でも、恐ろしいほどに強いですよ」
強化されただけの個体、自分の持つ素の能力以外が宿っている場合。ブラック相手には、いや正確には三杖ドルドロスには全く効果が無かった。
ダメージもない牽制用の弱い魔法をうつ。
それだけで相手にかかっていた効果や能力は全てなくなり、ただの何もない敵になる。相手はすぐに自分を強化しようとしているみたいだが、それも全て確実に消されていく。
結局相手は為す術なく身体を貫かれて倒れた。
◇妖力(時間の流れ以外)◇
取りあえず今度はひたすらに遠距離攻撃を放ってくる相手のようだった。そのままでもダメージは受けないだろうが、せっかくの練習なので動かないのも意味が無い。
そこで相手の攻撃をそのまま受けながら考えた結果、この場から動かずに倒すことに決めた。もちろん魔法を使えばその程度楽勝だが、それ以外の方法でである。
「妖力、流動操作」
攻撃が迫ってきている中、ブラックは妖力を選択した。時を止めるに等しいことを行えるが、この力はそれだけではない。
まずは自分の周囲の空間の流れを変える。
すると、今にも迫ってきそうだった真っ直ぐな弾は、ブラックの近くに来たところで方向を変え、そのまま撃ち放った本人に向かっていく。
幻影はそのことに気がつき、足をひねりバク転するようにして飛び立つことでなんとかして避ける。
しかし、それ間まるで追跡弾のように向きを変えて迫ってきた。
幻影は更に避けようとする。
だがそこで自分の動きさえおかしくなっていることに気がつく。
まるで逃げているのに身体が勝手にブラックの方へ動いていくのだ。
そして思った、当たってもいいんじゃないかと。
爆散、奴は自分の攻撃に当たって倒れる。
まるで操っていないのに操っているような感覚になるのは、それがブラックによって全ての流れを変えられていたからだった。
◇魔法◇
ブラックは高い攻撃力がやはり目立ちがりだが、実際のところ彼の強い部分は高い耐久力である。
妖力で相手の攻撃を当てさせないように流れを変えたり、相手を初っぱなから細胞一つ動かせないようにしたり。他にも相手の能力変化を消したり、相手の情報を全て管理できたりと攻撃で隙入る隙間がない。
その中でもやはりネックになるのがこの運命のパラドックスだろう。
実際にこの能力さえあれば、どんな攻撃を受けても生き残れるし、魔法が使えなくても余剰回復した分で攻撃できる。
「クロツグ様、こういうのもあまり言いたくはないのですが、今度は守勢に出て戦ってみましょう」
「分かった。攻撃を受けるから適当に頼む」
百合華はブラックがダメージを受けることをあまりさせたくはないようだが、事実上守り主体のブラックが攻撃ばっかりの訓練をやっていてもしょうがないからだろう。
今回は守りに入ると言うだけあって、複数が同時に向かってくる。
その中でも真っ先に来た幻影は槍を持って突撃を開始する。
しかしブラックは特に防ぐことなく、その槍で腹を貫かれながら攻撃を受け止める。
運命のパラドックスが働き貫かれたまま回復し始めるが、彼はその前にその幻影の顔面を鷲づかみにすると、そのまま握りつぶすようにして消し飛ばした。
また槍を同じようにして消すと、すでにそこにあった傷は完全になくなっており、服もすぐに修復される。
そうのんびり戦っている間に他の幻影達も準備が整ったらしく、一気に攻撃を仕掛けてきた。
魔法に斬撃に呪いに状態異常、他いろんな攻撃が飛んでくる。
この場合、普通の魔法使い達なら避けることを選択する。なぜなら障壁魔法などを敷いても防ぎきれないからだ。
だがブラックは違う。同時に複数の防壁魔法を張ると、全方位を何重にもしたバリアで、全ての攻撃をいとも簡単に防いだ。
おまけに発動したのは防御系魔法だけではない、敵の近くではブラックによる攻撃も同時に行なわれていた。
少し面倒だからか、爆発でまとめて吹き飛ばしているが、効果は絶大。
幻影は次々と倒れていく。
特に精神的に攻撃しようとしたものは、ブラックが魔法で攻撃を行なう前に倒れており、内臓が飛び出していたりと見たくもないほどグロい姿になっていた。
「お見事です、クロツグ様!」
百合華は喜ばしそうに歓声を上げている。
それもそのはず、数十もいたはずの幻影達は、ものの数十秒も経たずに立っているものはいなくなっていたのだ。
あれだけ幻影達で騒がしかったこの闘技場には、いつの間にか閑古鳥が鳴いていたのだった。
※一応、基本的な戦闘スタイルはこんな感じになっております。能力が多いので組み合わせもその分多くなりますが、まだこれでは紹介し切れてない能力もありますので、これどう使うのとかあればまた追記いたしますので是非是非。
※ただし、作品中でも鬼神の力だけはもの凄く強いどころではないので、もし書く際は申し訳ないのですが、参戦キャラクター紹介の中に書いておきながら、できれば使用を控えていただけるとありがたいです。(ブラック様も使いたいとは思ってないので)
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