失われた世界の片隅で

僕は失われた世界の片隅で一輪の花が枯れていく様を見ていた

花はとても美しく僕は一目見て惹かれた

あなたと見た花だった

可憐な花を一房あなたに送りたくて

僕は砂漠の中を旅して花を摘んできた


赤い花びらがあたり一面に散る

地表を覆いつくのは花の匂いと花びらの破片だ

世界をいっそ覆いつくしてしまっても

そこには美しい花が咲くだろう

あなたに知ってほしかったのは僕の孤独だった

人並に飲まれていく

一滴の花びらは

満月の夜に一斉に咲き誇る

白い光が月から差し込み

夜空を彩るのは暗い闇だ


暗闇の世界から

僕はあなたのことを待っている

その時は一緒に僕の寂しさも連れていこう

寂しさは僕にそっと寄り添う恋人だ

僕が愛したのはまぎれもなくあなただけだった

だから僕は空から無限に花びらを降らせた

赤い花が僕のひび割れた心のように

空から降ってくる

花はいつか大地を埋め尽くすだろう

かなうことのない僕の願いは花となって永遠に咲き続ける


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