花火

空に花火の火花が舞い散る

赤い光と青い光と黄色い光が

一直線になって頭の神経細胞を発火させる

奇妙にも僕はそこにいた

青い火花が輝く瞬間を見ていた

だから長い間ずっと僕はそのことを秘密にしていた

僕は偶然にも悲しみと心の住みかを共有していたのだ

実は冬の寒い時期にそうしたことがしばしばあった

時計の針はその時一直線になっていた

空から半円の月が落ちてくる

地上は一瞬で赤い海に飲まれる

そんなことを思い浮かべながら

僕は強い度数の酒を飲んでいた

朦朧としていく意識

いつも僕はそういうことにとらわれる

いつだって喜びを追い求めている

喜びと悲しみは両方が

くっついたり離れたりしている

喜びが大きい方が

悲しみは大きい

空には不死鳥みたいな巨大な鳥が飛んでいる

きらきらと瞬く銀色の星がずっと僕のことを見ていた

季節は冬を追い越そうとしている

昔からそうだった

いつだって僕は忘れたことなんかなかった

八月の花火を夢見ている

冬の積雪がこの街にもやってきた

無数の氷の結晶が大地に降り注ぐ

いつかそんな光景に見とれていた

まぶしい雪の光の反射

肌がゆっくりと日焼けするように

僕は積雪した雪の層に足を踏み入れて

ゆっくりと足が沈んでいくのを感じていた

月夜には

いつも僕は強い度数の酒を飲む

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