第7話
いつの日だっただろう。
その日は受験勉強の息抜きで自転車に乗り街中を走っていた。いつもとは違う
辺りも暗くなってきて、そろそろ帰ろうかとしたときそれを見た。
交差点を渡っている制服を着ている少女がトラックに轢かれる瞬間を見た。体が動けなかった。ラノベの主人公なんかだと華麗に助けるのだろうが、あいにく、俺はラノベの主人公ではない。まず体が動いたとしても少女がトラックに轢かれた所まで50メートルほどある。はっきり言って無理だ。
だが、少女と目が合ったような気がした。いや、目は合ったのだ。だから、どことなく罪悪感があった。
轢かれた場所が、良くも悪くも人通りが多い場所だったからすぐに救急車や警察などが来た。
そして、俺がそこから動いたのは救急車がいった後だった。
「夢か・・・」
それが、朝起きて一番最初に発した言葉だった。
起きた時刻は午前6時。ちょうどいいタイミングに起き、トイレにでも行こうと布団からでた時にレイがいつも寝入るはずの布団にはいなかった。布団に入った形跡もなかった。
―――まさか、あのまま布団で寝たのかレイのやつ。
そう思いトイレついでにレイを叩き起こそうとリビングまでいき、扉を開けたがそこにレイはいなかった。
言葉が出なかった。わけが分からなかった。
「レイ?」
そう問いかけても何の返しもなかった。
もしかしたらどかに隠れているのでは。そうじゃなくてもたまたまここにいないだけで洗面所や、トイレにいるのでは?とおもった。
家の中あらゆるところをさがした。トイレも洗面所も自分の部屋も布団の中もクローゼットの中も、ありとあらゆるところをさがしてもレイはいなかった。結局、自分の部屋に戻った。
「レイ」
喪失感があった。
この2週間いるのが当たり前だったレイがそこにはいなかった。
知らず知らずのうちに視界が悪くなり眼を擦った。そうすると、手に濡れた感触があった。窓を見てみるとそこにはうっすらと、目が潤んでいる少年の姿があった。
―――あぁ、泣いているのか俺は。
悲しかったのだ。
喪失感がある。
俺はこの喪失感がどこからくる物かがよくわかる。俺は多分恋をしてたのだ。たった2週間ばかしの出会いではあったが俺はレイという少女が好きだったのだ。いままで、何人かに告白したことはあった。だがそれは、『もしかしたら俺の事が好きなのではないのか』という勘違いだ。
だから、この喪失感は初めての経験だ。
―――あぁ、まったくもって笑えてくる。
結局あの後朝飯を食べる気も起きず、さっさと制服に着替えて学校に向かった。
2週間ぶりの中学校ははっきり言ってうるさかった。「冬休みなにしてた~」とか「お年玉いくらもらった~」など、うるさくて仕方がない。てか、お前がいくら貰ったかなんてどうでもいい。
そうして、歩いていると前から来た木更津と目が会った。
「あ、朝霧くんだ。おはよー。あの時以来だね」
「あ、あぁ。お、おはよう」
「それじゃあねー」
木更津はそういい俺を通り過ぎた。振り返ってみるとそこには女子二人と話してる木更津の姿があった。それを見ていると何故かレイの姿をおもいだした。もうレイはいないのに。
そして俺は前を歩いた。
今はもう桜が舞う4月。今日は
レイが消えて1年たった。今はもう、レイの顔も声も覚えてない。人間所詮そんなものだ。記憶なんてあやふやなものだ。そして、たぶん俺はレイと会わないのだろう。いや、会えなのだろう。なぜなら、幽霊というのは死んで初めてなれるのだ。死ぬことでしか幽霊はなれないのだ。だから、レイ。
そんな事を思いながら俺は高校の制服を着て、靴を履こうとした時にインターホンが鳴った。
―――誰だ、こんな時に。てか、インターホン久しぶりに聞いたな。
そうしているとまた、インターホンがなった。そう何回もなる。はっきり言ってくそうるさい。
「うるせいな、一体どちら様ですか」
すこし、怒りながらドアをあけた。
そこには、俺と同じ
高校では見たことがない生徒だった。てか、まず俺高校でも知り合い少ないけどさ。
だが、その顔には見覚えがあった。
「うわぁ~、一夜どころか何日も夜を共にしたのにそれはひどいなーかい君は」
その声にも聞き覚えがあった。
俺の事をそんなフレンドリーに呼ぶのは一人しかいない。
前みたく白いワンピースを着ておらず、うちの学校の制服を着ているが、ワンピースから出ていた足の先が薄くなく、靴を履いているが、俺の目の前にいるのは間違いなく―――
「レイ・・・」
———である。
「そうそう。私の名前は
そういい、彼女はにっこりと笑った。
もう彼女はレイ《幽霊》ではなく、レイ《秋嶋怜那》。
去年確かに俺はレイと過ごしたが、それはレイ《幽霊》だ。そして、俺がこれから過ごすのは、レイ《秋嶋怜那》なのだ。だから、初めまして。
「俺の名前は朝霧海翔。おはよう、レイ」
そう、自己紹介をした。初めましてではないけど、初めてちゃんとあった。
「学校いこ」
そう言われた肯定するしかない。
俺は玄関の鍵を閉めた。
「そういえば、お前年下だったんだな」
道を歩きながら俺はレイにいった。
「そうだよ、よろしくね先輩君」
「あぁ、よろしくな後輩」
「うん」
そういい、レイは笑った。
俺は気っとこの日の事を一生忘れないのだろう。
これから、彼女と歩いていくこの道を、俺は絶対忘れないでおこうと思った。
サンタクロースなんていう真っ赤な不法侵入してくる犯罪者なんて信じてない。
けれども、彼女と会ったクリスマスの奇跡は信じてもいいと思った。
中学生活最後の冬休み幽霊少女に恋をした コウヘイ88号 @kouhei080080
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