第1話 笑顔の裏側

お城までかなりの距離があるので、今の自分の置かれている状況を確認しながら歩くことにした。


電車の中であの天使は何と言っていただろう?


「次の世界での貴方の新しい人生が幸福で溢れたものであらんことを」


と言っていたかな。そういえば、国語の先生が


「最近ライトノベルが世間に浸透してきたからセンター試験の問題で出たりするかもな(笑)」


などと言っていたのを間に受けて読んでみたライトノベルと同じような状況だな。


だとすると、ここは異世界なのだろうか?にわかには信じられないな。


そうこう考えているうちにお城の城下町の入り口にまでたどり着いていた。


ここで、ようやくここが異世界なのかもしれないという実感が湧いてくるような驚きが多々ある。


まず、驚くのはこのお城と城下町である。絵本の世界から飛び出してきたかのような大きく白いお城とそこを中心に広がるレンガ作りの家の数々


お城と町の外側には大きな堀があり、外敵の進入をふせいでいる。


出入り口には大きな跳ね橋が掛けられており、そこで兵隊が検問をしている。


ここで1番驚くことは検問にいる兵隊もそこを通ろうとする行商も女も子供も皆、屈強な肉体を持っていることである。


全てが珍しくてキョロキョロしていると、僕を怪しく思ったのか兵隊の1人が僕の方に歩み寄ってきた。


「おい!お前。何をさっきから怪しい行動をしている?さっさと列に並べ!!」


急に話しかけられたので、あたふたしてしまった。すると、さらに兵隊が


「何だ?お前のその格好は?それにその軟弱な肉体は?」


黙れ。お前らのその付き過ぎの筋肉の方が異常だ!!


そんな悪態を吐いてやりたい気持ちを飲み込み、これ以上怪しまれない方法を考えた。


「すみません〜。実は僕辺境の出身で病弱な体なんです。それにこの格好は地元の民族衣装ですよ。」


できるだけ笑顔で言ってみた。それを受けて兵隊は


「なんだ、そうだったのかぁ。それで、どうしてこの王都『ブレインマッスル』にきたんだ?」


「実はただ1人の肉親の母が他界してしまい、身寄りもないので出稼ぎにきました。」


「そうか、辛いとことがあったな。そういうことなら、本来は通行手形が必要だが今回は特別に入ることを許可しよう。」


「ありがとうございます!!」


こんな優しい人を騙した罪悪感とこんなザルな検問で大丈夫か?という不安を抱きながら運良く町に入ることができた。


「病弱な体であんまり無理するなよ。」


去り際の兵隊の一言でさらに胸が苦しくなる。


だが、この兵隊との会話で重要なことが2つ分かった。


1つはここが王都であるということ。


もう1つはここが恐らくここが最大の商業都市であるということ。


さっき僕は「出稼ぎ」に来たと言った。もし、ここより大きな商業都市があるのならさっきの兵隊の性格からしてそこを勧めただろう。


ここが最大の商業都市だとしたらそれだけ多くの人と情報が集まっているはずだ。


まずは情報収集のために市場に行ってみることにした。

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ガリ勉異世界譚 @psy

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