第6話 太いモノをくわえて
日本に戻ってきて今日で三日目になる。その間イーナと一緒に仕事をしてるが実に順調で毎日が楽しい。トラックドライバーなんて本来孤独な仕事だし、ひとりで仕事するのには慣れてるんだが、話し相手が居るってだけで、だいぶ気分が違うもんだ。今はトラックになってるけど、本来は美女だしな。
それに、イーナの精霊術のおかげで助かることも多い。今日も本来は冷凍設備を積んだ車が必要な仕事が間違いで回ってきたんだが、イーナが冷気の精霊を呼んで庫内を冷やしてくれたから問題なく荷送できた。
と、そのイーナが珍しく何やら言いにくそうに話しかけてきた。
『なあ、番太……その……ちょっとよいか? 実はだな……』
「どうした、そこまで言い渋るなんて珍しいな?」
『あー、その、何だ……そうだ、燃料計を見てくれぬか?』
そう言われて気付いた。イーナは精霊の助けがあるとかで、えらく燃費がいいんだが、さすがに三日間燃料補給なしだと空に近くなってるな。
「ああ、腹減ったのか!」
『露骨に言うなっ!!』
おう、怒られちまった。そういや一応お姫様だったな。ちょいとデリカシー無かったかな。
「悪ぃ悪ぃ。んじゃ、ちょいと給油に行くか。この近くに普段から使ってるセルフサービスのトラック
『うむ、この体だと「軽油」とやらしか飲めぬようだからな。せっかくこの世界に来たのだから、前のように美味い菓子や肉も食べたかったのだが、まあ仕方あるまい』
それを聞いて、ちょっと意外に思ったので尋ねてみることにした。
「へえ、肉なんて食うんだ? エルフって『森に生きる種族で草食』ってイメージがあったから、ちょっと意外だな」
『ゆかりんも同じようなことを言っておったが、それは誤解もいいところだぞ。エルフが森に生きる種族だという印象の方は正しいのだがな。考えてもみよ、我らは森を守るために間伐をすることはあるが、森を切り開いて畑を作ったりはせぬのだぞ。果樹は植えるが、それだけではとても食料が足りぬ。森に生きる鳥や獣を狩って、それらを食べて生きているのだ。弓が得意なのは、そのためよ』
「なるほど、そう言われりゃそうだな」
そんな話をしながら行きつけのトラックステーションに向かう。トラックの給油は量が多いからセルフでやるのは少し大変なんだが、俺みたいな零細独立ドライバーだと少しでも経費節減するためにセルフステーションを使わざるをえないからな。
トラックステーションに着いたのでいつも通りの所に停めて、所定の操作をして給油ノズルを引っ張り出してきたんだが……
『こ、これをくわえるのか?』
「ああ。どうかしたのか?」
イーナが微妙に引き気味な感じがするのは何でだ?
『い、いや、何でもない……この体だと、我はそなたに身を
……何か大仰な言い方だな。まあいい、さっさと給油しよう。そう思ってイーナの給油口を開けて給油ノズルを突っ込んだんだが……
『ウグッ、あ、あぁ……ふ、太いッ』
「お、おい、大丈夫か?」
変な声がしたんで、思わず尋ねちまった。
『す、すまぬ。こんな筒状のものを口いっぱいに頬張るなど初めてのことでな』
「あ、ああ、なるほど」
思わず変な気分になりそうだったのを、何とか気を取り直して給油を始めた……んだが……
『ングっ、ングっ、ングっ……あぁ、何て多い……こんなたくさん……我の中に……』
おーいイーナぁ、お前、今、飯食ってるんだよな? 何でそんな色っぽい声出すんだよ!?
「……イーナ、すまん、ちょっと静かにしてもらえるか?」
『あ、ああ、すまぬ。こんなに一度に飲むことも初めなので、つい……』
「ま、まあ、それはわからなくもないんだが……」
それでイーナも黙ってくれたので、何だか気まずい沈黙ではあるものの、静かに給油は進んで行ったんだが……
『あああぁ、番太が我の中を満たしていく……も、もういっぱい、いっぱいなのぉ!』
「普通に『満タンだ』って言えよぉっ!!」
……ただ給油するってだけなのに、どうしてこんなに疲れるんだろうな?
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