33話 氷姫登場じゃんね
今歓声が巻き起こる試合会場に一人の少女が立った。
ほとんどが彼女の名前を呼び、彼女自身の強さと美しさに向けて歓声が起こっていると言っても過言ではないだろう。
彼女が所属するギルドにおいて彼女は最強でありまさに代表と呼ぶにふさわしい人材であった。
そして何が彼女を最強と呼ばせているのか、それは彼女のもう1つの名前が深く関わっている。
氷姫
わずか14歳、銀髪で青い瞳をした少女、フレイヤ・アス・ホールブルグはそう呼ばれている。
その名前が示す通り彼女は氷魔法を使い戦うのだ。しかしただの氷魔法なら最強とまでは呼ばれない。
それは彼女の魔力が要因の1つである。
「凄い歓声だよねぇ、それもこれも君の美しさに向けて起こっているんだろう。どうかな?良かったらこの後食事にでも」
フレイヤの目の前に立っている優男がキザっぽく言ってくるが、フレイヤは少しも笑みを浮かべず答える。
「悪いけど興味ない、でもそうね。私を倒せたなら考えてあげてもいいわ」
「そうかい、なら頑張らないとね」
そう軽口を飛ばしあった後、両者は一切口を開く事なく試合開始の合図を待つ。
「はじめっ!」
そう審判が言った瞬間、100メートルほどある試合スペースは一面氷に包まれた。
絶対零度のその氷は見ただけで寒気がするほどである。
そう、1つの要因として彼女のこの広範囲を凍らせるほどの魔力の多さこそが彼女を最強たらしめていたのだ。
「何だっ!?足がっ!」
優男は自分の足が氷浸けになっていることに気付くがもう遅い。
そして2つ目の要因、それは彼女は氷魔法を使わなくても十分に強いということである。
フレイヤは一瞬で20メートルほどある優男の元まで移動すると、彼の首に剣先を突きつけ彼に言う。
「降参してくれると嬉しいのだけれど?」
「……ま、参った……」
優男は手を上げて降参のポーズをとった。
審判も試合があまりにも早く終わったことに驚きつつもフレイヤ側の手を上げて宣言する。
「し、勝負あり!勝者フレイヤ!」
会場から大歓声が起こる中、フレイヤは氷魔法を解き、試合会場を後にしていった。
井田物語~俺は戦いにならないチートで異世界を生きなきゃいけないらしい~ 丸太郎侍 @marutarouzamurai
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