「70億分の二人」

SUN

00

ゆらり




揺られて




バスの中





まどろみながら


夕方の車窓を流れる風景を眺めてた




疲れた顔のサラリーマンや急ぎ足のOL



デパート食品売り場の袋を提げて


おしゃべりに夢中なおばさん達



並んで歩く


ちょっとオシャレなお姉さん達



携帯見ながら


人波をうまくすり抜けていくジーンズの若者



小さな男の子の手を引くギャルママ




さまざまな人々が行き交うのを見ながら


暖房の効いた車内で


心地よく


うつらうつらしてたら


高笑いと共に


数人の男女がバスに乗り込んできた



うるさくて思わず目が覚めちゃった



一斉に乗客達の冷ややかな目が彼等を見る



そんなのお構いなしに


大声でしゃべりながらドカドカッと席に座る


20代前半の男女のグループ



それを見て呆れた乗客達は


怒りの矛先を


その後から乗って来たカップルに浴びせる



みんなからの突然の冷めた視線に


繋いでた手を離し


顔を赤らめた高校生カップルが


あわてて私の横の二人席に座った



なんともなしに見てたら


つい高校生カップルと目が合っちゃった



やばっ⁉︎



みんなは君達に呆れてたんじゃないし


手くらい繋いでたって構わないのに


だから


そんなつもりで見てた訳じゃないけど……



と思ってたら



二人は照れて申し訳なさそうに


私にペコリと頭を下げた



とっさに私も会釈する



はにかんだ二人は今時の高校生にしては


とても初々しくて好感が持てた



こんな子達がまだいるんだあ



なんかいいな



そんな頃が私にもあったかなあ


思いをはせてみるけれど……


ムムムッ?



……そういえば


この地球上には


約70億もの人がいるんだって


桁が大きすぎてよく分かんないけど


一カ所にみんなが集まったら



東京ぐらい?


それとも


日本の広さぐらいにはなるの?


わかんねえ、しらないし



でもその中で


一体どれだけの人達に出逢えるんだろう?


街や道ですれ違うだけの人達


仕事仲間、バイト先の人達


同じ学校、学年、教室で馬鹿騒ぎした友達


時間も忘れて朝まで遊び歩いた仲間達


親友、恋人


親、兄弟、親戚


これから出逢うであろう


結婚相手、生まれくる子供達


私の愛する人



逢ってない人達がまだまだたくさんいる


逢えるものなら70億人みんなに


一人一人逢ってみたいけど……




その中で


どれだけの大切な人達に出逢えるのかなあ


その人数を言ってたドラマがあったけど


数を忘れちゃって思い出せない




ふと


そんなこと思いながら


隣の高校生カップルを見てみる



そういえば


この二人のような高校生カップルが


主人公のドラマだった気がする



物語の中の二人は


結ばれる運命を信じて


幾多の試練、裏切りや困難を乗り越え


やがて最後には結ばれる


そんな感じのラブストーリー



よくありそうな物語?



隣の二人には


ドラマのような


悲しく切ない事情がないのを願います




高校生の女の子の指先が


男の子の制服の裾を


遠慮がちに掴んでる



周りの目なんか気にしないで


手を繋げばいいのに……



でも


しあわせそうに微笑む二人を見てたら


ちょっと安心した




私にも現れるかな?


世界中で


たった一人の愛する人



必要とし


必要とされ



守り


守られ



時にはケンカしたり



信じ


信じられない時もあるかもしれないけど



それでも許し


癒され



愛し


愛されて



生涯を共に生きていく



かけがえのない存在




まだ出逢ってないと思うけど


いつかきっと


キミに逢えるよね




はじめは


ただ


すれ違うだけかなあ



でもね


それが必然なら


運命なら



必ず二人は


また


めぐり逢えるよね



私はそう信じてるよ




だって



キミと私は



この世界中で



『70億分の二人』




たった二人だけの



運命の赤い糸で結ばれた



永遠のソウルメイトなのだから……

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