第5話
二人は闇に白い点と化して、ぽっかりと浮いていた。
「でも、それだけじゃない。俺が見たいのはブラックホール……その中だ!」
「い、いやだよ! そんなことに僕を巻き込まないでよぉ!!」
「お前がいると、今起こってることがどれだけ凄いかって、わかるんだよ。俺は……もうこんなことじゃ驚けないしなっ!!」
友人が吐き捨てた言葉と同時にバッと手を振ると、その反動で友人の身体が一瞬のうちに少年から数十メートル彼方まで遠のく。
「ちょ……! 僕を置いていかないでよっ!! こんな所で迷子になったらどうするのさっ!?」
少年は、遠のいて小さくなってしまった友人の背後に闇黒を見て息を呑んだ。
「どうですか? これがブラックホールです!」
アナウンサー口調の友人が両手を軽く拡げた。
中の情報を全く明かさない、時空の領域。
情報がない。それに関しての情報は0(ゼロ)。
「そんな所にいちゃ駄目だよ! 呑みこまれるじゃないかぁー! 早く……早くこっちに戻ってぇー!!」
視界に入りきらない闇黒。
「もう遅い……もう帰れない。ママに会えないよぉ~……ハハッ……ハハハハハハハ!!」
闇の中に浮き彫りにされた友人が、抱腹絶到した。
そう、もう遅いのだ。全てが過去になっていく。迫るは闇黒の巨口。
「そんなのイヤだよぉ……なんでなの……やだってば……いやなんだ……来るなよ……」
迫ってきていることすら、既に実感にない。
「見えないぜ! もっとだよ……もっと大変なことだぞ? 地球も呑まれるよ。ありとあらゆる光を許さないんだ。真っ暗の中で一生出口を探してさまよい続けるんだぞ? 怖いだろう? それならさ、もっと驚けよ! ……ハハハハハハ!」
友人の姿は、もう影になって半分しか見えなかった。闇の空間が喋っているようだった。
怖いなんて、そんな感覚はもう麻痺している。脳みそが無くなってしまったかのように。
「あぅっ……………!?」
その瞬間、少年はどんな顔をしたろうか。
暗くなる。
暗く暗く暗く暗く………――
【つづく】
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