エピローグ いや、そっちじゃなくて……

 後日、遼の元へ一本の電話が入った。


「え、いやいや、許可って……」

「もちろん、日本の籍はそのままで大丈夫です。ご健闘、お祈りします……」


 ぷつ…………。


 外交官のお姉さんは完全に心を折られた声だった。それにしても、人間界と魔界。両方に籍を置くなんて誰が考えたのだろう。

 もちろん、一人しかいないのだが。


「ジャンヌ……本気だったか……」


 こうなると、魔界の住人として異世界日本を旅することになるだろう。魔族のパーティを組んで、異世界進出だ。


「でも……そっちじゃねぇんだよ!!」


 遼が望んだ異世界冒険譚。それは、思わぬ形で叶うこととなった。いや、叶っていないが、異世界を旅することには変わりない。


 彼は今日もため息をつく。

 人間界であろうと、魔界であろうと、なんとも思い通りにいかない世界だ。

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異世界Club 春小町 琴野 音 @siru69

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