4-15 信仰

 俺は地面に這いつくばっている。

 起きようとすると、打撃が降ってくる。

 這いつくばっている間、打ってこないのは、その必要性を感じないからだろう。アルベルトの盤面において、俺はもう詰んでいる。

 ここまでの攻防で、禁じられた火球エン・パイロは一度も撃てなかった。いくら走りながら詠唱できるといっても、相手のほうが素早ければ妨害される。

 アルベルトの――しかも四人いる――洗練された動きに、俺はついていけなかった。

「……」

 このまま負けるのか、俺は?

 キース教の信者に?

 ……そんなこと、あってたまるか。

 虚を突け。

 装填リロードまでは、

 あれが強力な魔法の予備動作だってことは、アルベルトもすぐにわかったはず。わかったからこそ潰しにかかってきたんだ。

 なら、これでどうだ?

 這いつくばったまま、装填リロード――を装って、留めずに、放つ!

 つまり、ただの放射型ブラスト

 四人のアルベルトは、反射的に腕で顔を覆って防御姿勢を取ったが、所詮は放射型ブラスト。ダメージはゼロに等しい。その代わり、アルベルトたちが防御姿勢を解いた時、人数が四人から五人に増えていた。

 俺は、ものなら、召喚できる。

「……?」

 よし、奴は意味がわかっていない!

 この偽アルベルトを操作して、隣のアルベルトに肘打ちを繰り出す。

 オリジナルにかなうわけもなく、前蹴りで返り討ちに遭う。

 けれど、俺が装填リロードをする時間はそれで十分だった。

禁じられた火エン・パイ……!」

 紙一重で、アルベルトたちに囲まれている俺は、打撃の嵐を受けて魔法を阻止された。

 計算通り。

「囲まれている俺」も召喚体、分身サーバントだ。

 本物の俺は放射型ブラストを目くらましにして透明化トランスペアを使い、輪の外に抜け出して装填リロード

 食らえ!


 禁じられた火球エン・パイロ機関ガト……


「……アルベルト、お前、本当にキース教を信じてるのか?」

「……」

「レオンから強引に誘われて、断り切れなかっただけなんじゃないのか? なぁ、そうなんだろ? 全部あいつの独りよがりだったんだよな?」

「……」

「そうだって言ってくれよ、頼むから」

「……〝そうだ〟」

 ……はは、馬鹿にしてやがる。

 わかった。もういい。死ね、狂信者。

 

 禁じられた火球エン・パイロ機関砲ガトリング

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