4-14 誠意

 伸縮自在のタカゲタと、縦横無尽に跳ねる先生の鞭。

 火薬を含む数種の粉末を使い分ける居合い術と、テオ流でのヒット&アウェイ。

 激しい攻防の途中で、先生が突然、「ここを通して! 私たちは銀龍ルーンドラゴンを手なずけて渚旅団の飛空艇に乗り込みたいだけなの!」と、洗いざらい全部言った。

 もちろん向こうもそういう目的ってことはわかってただろうけど、堂々と言葉にされるとさすがに面食らったらしい。

 先生はさらに「渚旅団を捕まえることは一文字シングルの課題でもあるんじゃないの?」と続けた。

「あんたの言うことはごもっともじゃ」と、リョーマは誠意ある回答をした。「けんど、今はこれが任務やきに」

「〝今は〟ってなに? いつまで? 十字軍テンプルに昇進するまでの我慢? ズレた考えだわ! だって、あなたたちぐらい強ければもうとっくに昇進しててもおかしくないもの! 本当は気づいてるんでしょ? 昇進できないのは、実力レベル戦歴キャリアじゃなくて、忠誠心が足りないからだって!」

「……」

 改めて思う――すげえな、この人。あたしもずけずけ言うほうだけど、質が違う。先生は後先考えてないんだ。隠された意図がない。だから、言葉に光がある。

「私はその、二人の憧れてる人のことをよく知らないけど! 彼が今のあなたたちを見て喜んでくれると思うの?」

 リョーマとシンの表情に、動揺が見て取れる。一方、あたしは落ち着いてきた。痺れ粉の効き目もそろそろ切れる。

 形成逆転――とか思うあたり、あたしは一生、先生みたいにはなれないんだろうな。


 大火球ラ・パイロ拡散包囲型ロースト


 分散した火球パイロがリョーマとシンを取り囲む。ナバル島のミミックからパクった射法。でも、これはただの布石。

 リョーマがシンのゲタに乗る。今度は歯を伸ばすんじゃなくてきた。速度はさっきよりある。

 このリョーマを目隠しにして、シンも突っ込んできてるはず。拡散包囲型ローストの配置はわざと正面を手薄にした。

 真っ向勝負。二人まとめてブン殴る――と見せかけ、ギリギリまでひきつけて、飛びのいた。

 次の瞬間、鞭の先端にくくりつけられた眠りの槌ナイトメアハンマーが、リョーマとシンの頭をこつんこつんと打った。

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