4-13 手順

 土球ガイア超拡散型グランショット――ナイフの雨ジャグリング

 

 挨拶代わりの一撃を難なく受け止めた岩盤の盾アークシールドの向こうから二番が現れて、「なにしてんの、キミ?」と言った。

 そう訊かれると思ってたから、答えは用意してあった。「気に入っちゃったんだ、あいつのこと」

「九番の隠し子が?」

「意味不明とは言わせねーよ。最初はお前のほうが九番に肩入れしてたじゃん」

「そうだね。でも、僕はじっくり考えたかっただけなんだ。グランクロワ様のおっしゃる通り、のか」

「結論は出た?」

「うん。間に合わない。グランクロワ様は正しい」

「根拠は?」

「キミもわかってるだろ? 九番の隠し子はを踏んでない」

「……まーね」

「気づいてないわけじゃないのに、避けて通ってる」

「オレには事情がわかる。エバンスにーちゃんのためなんだ」

「事情なんか関係ないよ」

 ……「なんのこと?」っていう返しじゃないってことは、こいつ、にーちゃんのことも調べがついてんのか。

「彼女が遠回りを選んだ時点で、間に合わないことは確定した」

 正直、二番の言うことは正しいと思う。

 けど。「間に合わなくてもさ、やれるだけやったほうがかっこよくね?」

「え、なにそれ。よくわかんないな」と言いながら、二番は土球ガイアの印を結んだ。「どうせ間に合わないなら、教えない。それが最上だよ。納得できないって言うなら、キミには消えてもらうしかないね」


 さて、と。

 今なら、仲間は誰も見てない。

 変化トランスを解除して、その魔力も攻撃に回すか?

(……)

 ドラ子ねーちゃんはたぶん、誤解してるんだろうな。

 オレは過去を隠すために変化トランスをキープしてるわけじゃない。ただひたすら、自分の見た目が嫌なんだ。

 本当に、嫌いだ。思い出すのも嫌だ。見た目が人並み以上の奴には一生わからないだろうけど、ブサイクで生まれたハンデってマジで重い。オレが女ならオレみたいな顔の奴、絶対に選ばない。

 人は見た目じゃないなんてのはさ、余裕のある奴が言うことだよ。みんな「身だしなみ」には気を遣うだろ? オレは生まれつき「身だしなみ」が悪いんだ。人前に出せる顔じゃない。呪われてる。

 だから、変化トランスで覆った。こっちが本当のオレだと信じ込んだ。寝てる間も解けないように訓練した。

(ああ、なんだ)

 だったら、最初から答えは出てたじゃんか。

 解除はしない。このままで戦う。元の姿を晒すぐらいなら死んだほうがマシだ。

(……)

 死んだら流石に解除されるだろうな。

 でも、問題ない。死ななきゃいいだけだ。

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