4-8 飛行
かつてギボン・オディロン間は何度か往復したけれど、ロウラン行きの便に乗るのはこれが初。
天高く、絶好の飛行日和。しかし、俺たち一行の表情はやや険しい。意気を上げて出発しようとした矢先、
ドラ子は舌打ちをして「先回りされたな」と言った。
そもそも
捕獲するには
冒険者にも需要がない。
危険生物として条例で所有を禁止している地域も多い。
よって、一部の特権階級が道楽で飼うものとされている。
今回、捕獲を禁止したのは、ニュースによると「民間人の安全のため」らしい。なにを今さら……と思ったのは俺たちだけではないだろう。
ニュースを見ている時、クララ先生は「癒着が露骨になってきたわね!」と言った。その通りだと思う。
「民間人の安全」じゃない。奴らは渚旅団を守ろうとしている。
水平飛行に入ったところで、出し抜けに「こいつハイジャックしちゃえばよくね?」とフィンが言い、周りの乗客たちがぎょっとした視線を向けた。
「なんでやねん!」と、先生が大げさにつっこんでくれたおかげで、その場は事なきを得た。
野生の
渚旅団に近づくには「特権階級の宝物庫の警備員になる」という手段もなくはないけれど、特権階級は身元不明な人間を雇わない。うちのパーティーは「謎の存在二名と禁呪使い二名」なので、その手は却下となる。
強行突破をすれば、当然、追われる身となるだろう。突破後の方針は「速攻で
人生初の本物の冒険。恐怖と高揚感がないまぜになって、おかしな気分になっている。
ドラ子が俺の顔を見て、「どうした、酔ったか?」と言った。
俺は恐怖と高揚感がないまぜになって少々おかしくなっていたので、「恐怖と高揚感がないまぜでおかしな気分だ」と、丸ごと全部言葉で言ってしまった。
「エバンス君、そのセリフは人の話し言葉として不自然だわ」と、先生が小説家に対するダメ出しのようなことを言った。
俺としては先生の話し方も珍しいほうだと思っている。
世界最大の古木・
その高さはウルヌカス火山とほぼ同じ。大きく広げた枝に黄金の果実をつけて、眩しく輝いている。世界の始まりの日から存在していたと言われている。
オディロン・ロウラン航路最大の見せ場だ。これを見たいがためだけに、行き先に用もないのに搭乗する物好きもいるという。
「すげー! 超キレー!」と、フィンが無邪気にはしゃいでいる。
「目の保養になるわね!」と、先生はなんとなく不適切な表現をしている。
ドラ子は「……」言葉もなく、じっと光を見つめている。
珍しい反応だな。
「どうかしたか?」と俺が声をかけると、ドラ子は「いや、別に。ちょいと見とれただけだ」と、取り繕った。
この時ドラ子の考えていたことがわかるのは、少し後のことだった。
もっと早い段階で問い詰めていれば、違う結果になったかもしれないし、そうではないかもしれない。
遠くの空に雷雲が見え、
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