4-7 任務

「ふああ……」

「ほれ、シン。仕事中やぞ。気ぃ抜いたらいかんぜよ」

「つっても、だぁーれも来ないじゃないですか」

「来んなら来んでえいがじゃ。誰も通さんゆう任務やきに」

「そらそうですけど」

「ま、退屈なのは確かやのう」

「……リョーマさん、考えたことあります?」

「何をじゃ?」

「この任務の意味」

「……ああ」

「渚旅団の懸賞金上げといて、銀龍ルーンドラゴンの捕獲は禁止するって、矛盾してますよね。空飛ぶ手段がなきゃ追っかけようがないんですから」

「懸賞金はポーズやろうな。きちんと捜査しちょりますよーっちゅう」

「やっぱり北冒と旅団はツルんですかね」

「何やら正しゅうない気配はあるのう」

「釈然としねぇなぁ」

「ちゅうても、わしらぁは一文字シングルやき、上官の命令に逆らうほうが正しゅうない。十字軍テンプルに昇進すれば自分で判断できることも増えるやろ」


「替わるよ」

「おお、隊長さん。そったら、休ませてもらいます」

「……」

「なんか言えよオメー」


「リョーマさん、もう一個グチっていいですか?」

「このチームのことか?」

「そうです」

「隊長が子供っちゅうがはわしも驚いたけんどのう」

「いや、隊長は話通じるからまだいいですよ。もう一人のあいつ、なんですかアレ」

「ちっくと変わったお人のようじゃのう」

「いや、全然〝ちっくと〟じゃないです。距離縮めようと思って昨日〝オメー召喚士サモナーにしちゃ結構いいガタイしてんじゃん〟って褒めてみたんですけど」

「おお、偉いぞ、シン。そいつは正しい」

「でしょ? そしたらなんて返してきたと思います? 〝必要〟ですよ」

「は?」

「だから、〝必要〟とだけ言ったんですよ」

「なんのこっちゃ」

「わけわかんないでしょ」

「単語しか言えんがやったらせめて〝感謝〟にしてほしかったのう」

「ホントそうです。ったく、あんなにコミュニケーション能力低くてよく一文字シングルが務まりますよね」

一文字シングルちゅうても、故郷の魔物発生エンカウントに対応するために仕方なく登録したそうやぞ。ほんで、当初は地元におってええちゅう話やったがに、結局人手不足で飛ばされてきたらしいがじゃ」

「え、リョーマさん、あいつとそんな複雑な会話したんですか?」

「いや、隊長さんから聞いた」

「なーんだ」

「多少扱いにくうても、腕がええちゅうことやろな」

「ガタイはともかく、顔が強そうじゃないんですけどねぇ」

「見た目に惑わされるがは正しゅうないぞ」

「……へーい」

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