4-6 仲間
「で、結局その〝組織〟ってのはなんなんだ?」と俺が訊くと、ドラ子の答えは「わかんねえ」だった。
「フィンから聞いたんじゃないのか?」
「これから突き止めようぜ。――っていうので、いいか?」
「いいか、って?」
「お前の〝冒険〟、これでいいか? もちろん盗まれたマンドラゴラも取り返すつもりだけどよ、お前のっつーよりあたしの冒険に付き合わせてるみたいで、ちょっと引っかかってんだ」
ドラ子のくせに。「……気を使うなよ。俺も仲間に入れてくれ。
「……生意気言いやがって」と、ドラ子は照れ臭そうに言った。「さて、先生はどうする?」
「あら、私、とっくに仲間のつもりでいたわ!」
「一応、なんかヤバそうな組織の秘密を暴こうって話だからな」
「望むところよ! 追われる者同士、仲良くしましょ!」
「おし、じゃあ決まりだな!」
「ところで、一応確認だけど、リーダーはドラ子ちゃんってことでいいのよね?」
そうか、先生がドラ子を呼ぶ時はちゃんづけになるのか……と、俺は本題とは関係ないことに、数瞬、心を奪われていた。
「オレはいーよ!」と、フィン。
「賛成」と、俺もフィンに続いた。
「了解」と、ドラ子。「三人が納得してくれんなら、あたしが仕切らせてもらう。よろしくな」
「で、それを踏まえてなんだけど」と、俺は挙手して言った。「やっぱり、ドラ子の命がかかってることだろ。組織について、もっとフィンから話を聞いといたほうがいいんじゃないか?」
「知りたきゃなんでも教えるよ」と、フィン。「オレがホントのこと言うとは限らないけどね」
「フィンはホントのこと言うだろうけど」と、ドラ子。「あたしは自力で突き止めて、自分の頭で判断したい。親父があたしを
「了解」「わかったわ!」と、俺と先生は同時に言った。
新しいチーム――高揚感と共に、俺は少なからず焦りも感じていた。
冒険者がプルーフ――裏エビデンスの正式名称――を取ると、その脅威に対処するため、組織から追っ手が放たれる。なら、その追っ手が裏ボスより弱いわけがない。ナバル島の触手のミミックはドラ子でもギリギリの勝負だったというから、単純に考えてフィンはドラ子より強いということになる。
今のところ、俺は金魚のフンみたいなもんだ。早く追いつかないと。
「目的とリーダーが決まったところで」と、先生。「ドラ子ちゃんの美人格闘家姿が見たいわ!」
「……」それ、今必要ですかね。
「いいぜ」と言って、ドラ子は
スノーホルムにいた頃は白のワンピースだった服装が、体にフィットした黒の武闘着になっていた。
先生は「あらやだ! ファティーマさんそのまんまじゃないの!」と言って、俺を見た。「エバンス君もスミにおけないわね!」
いえ、先生、あのですね、ご存知の通りファティーマ先輩はみんなの憧れだったわけで、俺と先輩の間には特になにも。
「スミにおけないってなにー?」とフィン。
誰かこの子供を外につまみだせ。
「エバンス、赤くなってんじゃねーぞ」と、ファティーマ先輩が言った。
本物のファティーマ先輩、なんか、すいません。ご主人にも謝ります。
「そんじゃ、気を取り直して、行き先を発表する」と言って、ドラ子は地図を広げた。
「もう決めてあるのか?」
「ああ」
ドラ子とフィンはこの十ヵ月、組織の本部を探していたらしい。
フィンによれば、本部への出入りは専ら
「東へ向かう」
「そこに本部が?」
「いや、本部の場所はまだわかってねぇんだけど、どうやら渚旅団が連中とつながってるっぽいんだわ」
「!」渚旅団――以前、ピリカから聞いたアレか。
「渚旅団って」と、先生。「あの賞金首の? フィン君の一味は体制側の組織なんじゃないの?」
「体制側だろうと、あたしは見てる。だから、賞金首とのつながりなんてバレたら大変だよな」
「怪しい匂いがぷんぷんするわね!」と、
「でも、渚旅団はいつも空の上だろ? なんで東へ?」
「目指すはロンシンの谷」と言って、ドラ子は地図に×をつけた。「野生の
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