4-4 矛盾

「さて、クララ先生、〝装填リロード〟についてもうちょっと詳しく教えてくれ」と、ドラ子が言った。

「いいけど、あなたはもう全部ご存知なんじゃないの?」

「あたしはな。けど、この話は全員で共有しとく必要がある」

「なるほど、そうね!」

「あたしはなまじわかっちまう分、一人で突っ走んねぇように気をつけなきゃならねぇ。エバンスとフィンも、気になることがあったら遠慮なく言ってくれ」

「オッケー!」と、フィン。続いて俺も「わかった」と言った。

 やっぱりドラ子こいつ、変わったな。なんていうか、以前より風格がある。

「でも、詳しくって言っても、なにを話せばいいのかしら?」

「文献は調べたのか?」

「ええ。学園アカデミーの資料室でアーク隊の旅行記を改めて読んでみたわ」

 アーク隊の旅行記は普通の書店では買えない。閲覧限定書籍レファレンスに指定されていて、公営の図書室でも館外に持ち出すことはできない。

拡散型ショットの登場って結構大きな出来事だったでしょ? そう言えば、エバンス君はちょうど、放射型ブラストから拡散型ショットへの過渡期を経験してるのよね」

「はい」

「私はずっと気になってたの。アーク隊はまだ拡散型ショットを知らなかったはずなのに、どうしてとんとん拍子で駆け上がっていけたのかって。みんな天才だったって言っちゃえばそれまでかもしれないけど」

 鎖盾ディスカーマーの使い手アーク中将、回復魔法に長けた剣士サンドバル、速射の弓使いディアナ、そして、習得最難関の土球ガイアを自在に操る魔導士フルブライト。前衛二枚陣形ツートップフォーメーションは彼らがモデルにして理想とされ、異説はない。

「結局、旅行記を読み直しても新しい発見はなかったんだけど、今思えば、たぶん装填リロードに関連する記述は削除されてたんだと思うわ。文章の前後おかしくね?――ってとこがちょいちょいあったから」

「じゃあ先生は、肖像画をヒントにして、ほぼ自力で装填リロードを編み出したってことだな?」

「そういうことになるわね!」と、先生はふんぞり返った。

「で、それをカリキュラムに取り入れようとして指名手配、と」

「そうなの! フィン君、どう思う?」

 フィンは「んー、オレから言えることは特にないね」と、意味深なことを言った。

 ドラ子は床の上をウロウロ歩き回りながら、「拡散型ショットはよくて装填リロードはダメ、っていうのが納得いかねぇよな」と言った。

「そうなの! だから私も意固地になったのよ!」

「エバンス、お前の意見は?」

「アーク隊は装填リロードを使ってた――ってことで、まず間違いないと思う。体制側はアーク隊の快進撃を見て、装填リロードを禁呪として封印した……

 ……もしかして、隊が〝行方不明〟になったのって、実は体制側に処分されたんじゃないか? だとすれば、クララ先生を指名手配にするっていう過剰反応も頷ける」

「だな」

は、七大魔山セブンサミッツに注目を集めたいけど、制覇コンプリートはされたくないっていう、ある意味矛盾した立場に立ってる。その目的は〝戦争の回避〟だけじゃない……ような気がする」

「あたしも同意見だ。奴らはで留めたがってるように見える」と言うドラ子の視線は、なぜかフィンに向けられていた。

「さて、ここで大事なお知らせだ。そちらにおわすフィン君は、どうやら〝奴ら〟のメンバーらしい」

「!」

「ひでーなァドラ子ねーちゃん。メンバー〝だった〟って言ってよ」

「こいつの記憶を読めば、今あたしたちが抱えてる疑問や疑惑は全部解けるだろう。けどあたしは、記憶を読んで対決するバトるより、読まないで仲間にする道を選んだんだ」

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