3-13 銀龍
例の行き止まり周辺では、あたしが調べた限り、隠し通路の類は見つからなかった。その代わり、ミミックの亡骸――ただの宝箱――から、
このミミックは
試しに、この裏エビデンスを頭上にかかげてみた。
「……」
反応なし。けど、まさかただの記念品ってわけじゃないだろう。
他の
ぬるいと思って見下してた
セントナバルから乗合馬車でギボン平原のギボン飛行場へ。チケットを買って
「オディロン行き、出発致します。しっかりと背びれにおつかまりください」
離陸。前の席のアベックが「きゃー♡」とか言ってイチャつく。うん、よかったね。お幸せにな。二人とも浮気してるけど。
隣の席になった鎧の戦士――常在戦場がポリシーとのこと――をチラ見すると、真っ青な顔をして、必死に背びれにしがみついていた。
あたしの視線に気づいたのか、戦士は精一杯の威厳を込めたらしい声で、「ご婦人、
いや、どう見てもそっちのほうが初めてっぽいだろ。あたしもだけどさ。
「ああ、こりゃ最高だな!」と、あたしなりに励ますつもりで答えた。
「そうだな! うむ、絶景絶景!」と、戦士は声を張り上げた。
実際、眺めは最高だ。雲一つない快晴。
現在、世界に存在する
ただ、まやかしの平和だと、あたしは思う。
無事、オディロンに到着。
戦士、地に足がつくのが嬉しいのか、鎧をガチャガチャ鳴らして地面を踏みしめながら、「ご婦人、これからどちらまで?」と訊いてきた。
「ガシェバだけど」
「おお、奇遇な。拙者もガシェバへ向かうところだ。差し支えなければ、共に参らぬか?」
こいつの過去からして、ナンパのつもりは毛頭なく、本気でご婦人の一人歩きを心配してくれてるらしい。いい奴だ、モテないけど。
「いいぜ。じゃあ、景気づけに一杯やりながら歩かねぇか?」と、あたしは土産物屋を示した。
「うむ、名案だ!」と戦士は言った。
適当な瓶詰めのワインを購入。
数ある研究機関の中でもガシェバの研究所を選んだのは、ついでに六・一九の跡地をこの目で見てみようと思ったのと、この地方の「赤」がうまいって噂を聞いたからだ。
乾杯して、ぐいっとラッパ飲み。うほっ、いい渋みしてんじゃねぇか。
「よろしくな、パトリック!」
「……拙者、まだ名を名乗っていなかったと思うが?」
「……な、なーに言ってんだよ! さっき聞いたぜあたし」
「むぅ、そうだったか……?」
やべーやべー。あたし、酒入ると毎回やらかすな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます