3-9 宝箱

 例の行き止まりには、宝箱があった。木の板と鉄の鋲でできた古風な宝箱。

 きっと宝箱に擬態した魔物ミミックなんだろうと思いながら開けてみると、案の定だった。

 いっちょやりますか、と思った時、あたしはよろめいていた。

「……?」

 何が起きた?

 左目が見えねぇ。

 ああ、額から出血して目に入ったのか。

 ダメージを受けるのがなもんでキョドっちまった。

 にしても、やべぇな。どんな攻撃食らったのかわかんなかったぞ……

 油断してたってのは正直ある。けど反応すらできないってのは予想外だった。

 ……こりゃ本気出したほうがいい。テオ流の練習はやめとこう。

 完全変化トランジスタ解除。

 

 極大火球テラ・パイロ――超圧縮型コンパイル


 放たれた炎のは、ミミックの目前で跳ね返って、こちらに戻ってきた。

 うお、危ね!

 ギリギリ回避。ちくしょう、ずっとでいたから、での動きが衰えてやがる。

 で、どういうことだ、今のは? 超圧縮型コンパイルの貫通力なら反射鏡リフレクションもブチ抜けるはず。まさか、反射鏡リフレクション超圧縮型コンパイルだったってことか……?

 ミミックから火球パイロが発生。火には火をってか? あ、あたしがマンドラゴラだからか。

 火球パイロは二十発以上(数えきれなかった)に分裂して、一瞬であたしを取り囲んだ。

 くそ、速ぇ。かわすのは無理だ。

 

 全属性吸収オールゾーブ

 

「!?」

 あっち、あちち、ケツが燃える。

 マジかよ、許容量超えてきやがった。

「やるじゃん、あんた」

 ミミックはあざ笑うかのようにフタをカタカタと鳴らしている。

 ……気圧されてる場合じゃねぇ。

 吸収した魔力を使って特大の目覚まし槌ウェイクアップハンマーを生成。射撃が跳ね返されるなら直接ぶっ叩くまでだ。

 あたしが突進していくと、ミミックはバタンとフタを閉じた。

 防御態勢? 構うもんか。フタごと砕いてやる。

 次の瞬間、ミミックのフタが開き、触手が飛び出して、ハンマーにからみついた。

 やられる――と直観して、あたしはハンマーから手を離した。

 ハンマーは触手に締めつけられて、あっという間に粉々になった。すげーパワー。

 なるほど、初っ端に一発くれやがったのはこいつか。

 別の触手が伸びてきた。吸盤がついてる。イカっぽいな。焼いたらいい酒のつまみになりそう……なんて余裕こいてらんねぇ。

 飛びのいて回避。

 さぁ、どうする?

 ったく、極端なんだよな。七大魔山セブンサミッツは生ぬるいと思ってたけど、だからっていきなりこんな格上出してこられてもよ。

 触手が来る。回避、した先にまた触手。かろうじて回避。

 くそったれ、よけるので精一杯だ。

 逃げるしかない、か? 山頂の石エビデンスを使えば麓までワープできる飛べる

「……」

 いや、だめだ。ここで逃げたら、エバンスに合わす顔がない。

 イチかバチか、やってやる。

 触手につかまれたら終わり――なら、つかませなきゃいいんだ。

 完全変化トランジスタ偃月刀シミター

 プラス、雷属性付与イエローウェポン

 で、高速回転斬り! 

 触手は躊躇なく襲いかかってくる。

 頼むぜ、足りてくれよ、切れ味。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る