2-10 校庭
犯人の手がかりになるようなものはなにも見つからなかった。
白昼堂々、
「これで立ち上がるしかなくなったな」と、ドラ子。
「立ち上がる?」
「取り返しに行くだろ、作物」
「……」
「行こうぜ。
「……」
もちろん、諦めるわけにはいかない。このままじゃ収入ゼロ。自分用のパンもドラ子に飲ませる酒も買えなくなる。
「わかった。行こう」
冒険――と呼ぶには受動的だけれど、ドラ子が手を貸してくれるなら、面白くなりそうだ。
「よし。そんじゃま、今日のとこは寝とけ」
「え? いや、今のうちに聞き込みに行かないと……」
「あたしがやっといてやる。もうお前には活力が残ってねぇ。足手まといになるから家で寝てろ」
「……お前、いい奴だな」
「知ってるよ。じゃーな」と言って、ドラ子は美女の姿で坂道を降りていった。
一人になると、どっと疲れが襲ってきた。今日は色々なことがあり過ぎた。
ばったりとベッドに倒れ込んだ俺は、
バザン市国国立武術学園(全寮制)。
武芸を志す十二歳から十六歳の男女が毎年冬に入学試験を受ける。
指導内容は武器・魔法の使い方から魔物の生態、サバイバル術まで多岐にわたる。
卒業後の進路は
俺が入学した年は、この世界に
十五歳の俺も、身を引き締めて初日の授業に臨んだ。
しかし、どれほど真摯に取り組んでも、覚えていない魔法は使えない。
「今日は
周りがガヤガヤと校庭へ出ていく中、俺は一人、真っ青になっていた。
基礎ゆえに、力の差が現れる。「
その
入試では
クラスメイトたちは次々と
俺の番が近づいてくる。まさか使えないとは言えない。
こっそりと印を確かめ、魔力を練る。汗が噴き出す。喉が乾く。
「次、エバンス君!」
進み出る。足が震える。視界が狭い。まるで処刑台だ。
本番の奇跡は――起こらなかった。
せめて笑い者になりたかった。憐れみの視線が突き刺さる。
その日、校庭はあまりに広く、俺はあまりに小さかった。
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