2-4 苦戦
状況を整理しよう。
敵は
こちらの武器は
現在のダメージ。
ドラ子は依然行方不明。
アルベルトなら――と、俺は思わずにはいられなかった。思うまいとした。思うまいとしたという時は手遅れなのだ。
アルベルトなら、群れの中の
かつての仲間、召喚士アルベルト。
本来、多種多様な魔獣・神獣を使役するのが召喚士だが、アルベルトは最初から最後まで――少なくとも俺が引退するまで――
彼はいわゆる「マニア」だった。興味の対象は一貫して「陣形」や「戦術」であり、「個人技」や「一騎打ち」には一切関心を示さなかった。
本人の戦闘能力は平均以下。前髪が無駄に長く、線が細く、覇気がない。「冒険者」より「ひきこもり」や「病人」という肩書きの方が似合う。
けれど、
最大三十六体の小さなブリキの兵隊。一体一体はさほど強くなく、普通は数を頼んで突撃させるだけのものだが、アルベルトが指揮を執れば彼らは立派な騎士団だった。俺たちが
「お前がリーダーをやった方がいいんじゃないか」と、アルベルトに言ったことがある。
「無理。人間だから」と、彼はチェスの研究書から顔を上げずに答えた。
アルベルトは必要最低限以下の単語でしか喋らない。付き合いの浅い者とは会話が成り立たないことが多い。
俺は返答の意味をすぐに理解した。彼は
陰気で頑固だけれど、どうすればパーティーに貢献できるか、常に考えていた。
あいつの性格は、嫌いじゃなかった。
四方八方から時間差をつけて突進してくる。噛みつくのでなく、通り抜けざまに翼で切りつける戦法に変えたようだ。俺の全身は瞬く間に切り傷まみれになった。
〝
正面から来た一匹を狙って左から右へ薙ぎ払う。
仕留めた。閃光が弾ける。
しかし、他の個体は怯む様子もなく襲いかかってくる。切り傷がさらに増える。
敵は
二度同じ手を食うか――と、俺は岩に向かって剣を突き上げた。
数秒――おそらく数秒後、意識を取り戻した時、俺は地面に倒れていた。
頭が痛み、腕が痺れている。
かたわらに岩と折れた剣が落ちていた。
また
「アホか俺は」と、つぶやかずにはいられなかった。
「アホかお前は」と、岩の上から声がした。
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