第12節 ウールという魔物?

「ご主人!これからよろしくお願いします!」


ウールは尻尾をフリフリと振ると念話で話しかけてきている。


「そもそも霊魂契約ってなんだよ」


「霊魂契約というのはね。僕の魂とご主人の魂を心の鎖で結合させたんだよ!」


ウールの話だとこの世界イシアには様々な契約が存在するそうだ。


その中でも上位に位置するのが霊魂契約で、この契約は上書きできない、破棄できない、拒否できないと三拍子揃っていた。


(拒否できないって……強制的かよ)


つまりウールが勝手に契約成立させて、その上、もう破棄も上書きもできないという事だ。


まだかわいいウールだったから良かったもののガチムチのおっさんにこの契約をされたらと考えると……血の気が引いていくのがわかる。


そのことをウールに聞いてみた。すると


「あー無理無理この契約は高位の霊獣専用だから」


ウールは断言した。


(霊獣?それは種族かなんかなのかな?)


この世界の基本しか知らないカミトはなんのことか分からないと聞き流した。


とにかくガチムチのおっさんは使えないということが分かり、ほっとしているのである。


「へーご主人てこの世界の人じゃないんだね!」


「っ!なんでわかったんだ!」


「霊魂契約は魂を結ぶ契約だから契約者のステータスが見れるんだよー。ご主人は祝福とか鑑定とか手に入れるのにすごく苦労するものばっかり持ってるからそうじゃないかなって?」


(なるほど)と頷いてしまったカミトだがこちらからもウールのステータスを見れるのでは?と思い、ウールに鑑定をかけた。


ウール 5才(1502才) 転生霊獣(4回目)

Lv.5

HP 500

SP 500

MP 1200

TP 100

魔法 風魔法、火魔法、水魔法、固有魔法

術技 なし

スキル 念話(契約)、威圧、破魔

ユニークスキル 転生

装備 なし

祝福 なし

契約 霊魂契約【カミト】

呪い 深王の呪い


(もう何から突っ込んていいかわからんよ……)


まず魔法の豊富さ。


使える属性の種類が多い。


さらに固有魔法も持っている。


こちらはウールが隠蔽していたのか、詳細までわからなかった。


次にまばらに散りばめられているる転生の文字も気になった。


年齢の表示もおかしい。


その他色々と聞きたいことが色々あったが、1番気になっていたことを一言。


「ウールって何者?」


ウールはキョトンとして答えた。


「僕にもあまり記憶ないんだよねー。気がついたらあそこで寝てたし……」


はぐらかすようにウールはそう言った。


ウールが難しそうな顔をしていることから、この先はあまりふれない方がいいと感じた。


とにかく今分かっていることは規格外の力を持っているかわいいペットが増えたということである。


そのうちウールがなにか思い出し、話してくれることを楽しみにすることにした。


ウールとの契約の一悶着で忘れていたが、あたりはもう真っ暗だった。


この日の探索は諦め、カミトとウールは[火生みの祭杖]で火を起こし、大量に採ってあるキノコを焼いて食べて眠ることにした。


カミトはウールを抱くような形になり、ウールは丸まってカミトに体を預けている。


まだ出会って数時間しかたっていないのにこの仲の良さは契約のお陰なのか、本人達が単純なのかは定かではない。



深夜0時、転換のお時間である。


昨日と同じく魔法陣が出現し、カミトは男の肉体に戻っていた。


カミトとウールは寝心地がいいのかぐっすり眠っている。



翌朝最初に目を覚ましたのはウールだった。


(なんだろう?このゴツゴツした腕……まるで男みたいな……)


ウールはカミトの顔をのぞきこんだ。


(……誰こいつ……ご主人はどこ!?)


ウールが混乱する中カミトも目を覚ました。


「おはようウール……ん?」


自分の声が低くなっていることに気づく。


(あーまた転換したのか……)


1回目とは違い全然違和感なく受け止めることが出来た。


理解とすると同時に凄まじい空腹感に見舞われる。


(そう言えばこっちの体では何も食べてないんだった……)


男の姿になったらウールとの契約も切れると思っていたが、霊魂契約は魂での契約のため、転換後でも有効なことが確認できた。


ウールは「しゃーー」っとカミトを威嚇していた。


「ちょっと待ってくれウール!」


カミトが念話を使ってウールに話しかける。


「えっなんで念話出来るの?」


ウールは困惑した表情をしている。


カミトは念話でウールに今までの出来事を話し始めた。


「うーん。女神様はお優しいからそんなことをするとは思わないけど……実際に目の前にすると本当なんだね……」


ウールは納得してくれたみたいだ。


「でも僕のご主人は女の子の方のご主人だからね」


「いやいやおかしいだろどっちも俺なんだぞ!」


「それでも男の人にはベタベタさわられたくない」


(こんなに理不尽な事が今まであっただろうか。この生物は女の俺にはもふらせて、男の俺にはもふらせてくれないというのだ……差別だ……)


カミトは深い絶望を味わっていた。そして一言


「このむっつり色欲獣め」


カミトはすこしすねながら言い放った。


「ちょっと待ってよ。なにか勘違いしてるみたいだけど僕メスだよ?」


確かに性別は確認しなかった。興味もなかった。だけどまさかメスだとは思わなかった。


「あの……その……ごめんなさい!」


綺麗な土下座だった。


確かに普通の獣ならばオスだろうが、メスだろうが関係ないだろう。


しかし知識を持っている霊獣だと考えると何故か罪悪感が湧いてきたのだ。


ウールはカミトの謎のポーズを未知との遭遇を経験したようにポカーンと口を開けて眺めていた。


(なんでこの人は契約獣である僕にこんなに誠心誠意謝ってくれるのだろうか?)


この世界の契約獣は大体が契約者の力の一部として考えられる。


中には道具のように使い捨てられる者もいる。


そんな世界で契約獣に謝罪をするカミトの姿はとても珍しかったのだ。


ウールは微かに笑みを浮かべると


「しょうがないなぁー。男のご主人にも頭くらいは撫でさせてもあげてもいいよ」


「まじで!よっしゃーー!」


カミトはガッツポーズをし、喜びの声を上げていた。


(このご主人ならこの世界の理を変えてくれるかもしれない)


ウールは心の中でそっと思ったのだった。

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女神に拉致され祝福と呪いを貰った件。〜楽しい異世界生活を……送りたい〜 七浜ユウキ @yuukinanahama

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