第11説 ウール。
その生物は祭壇の上の揺りかごですやすや眠っていた。
毛色は金に近い黄色、毛並みは全体的にフサフサしていて、少しカールがかかってる。
イタチやフェレットのような姿をしていて、眠っている姿はまるで丸めたワタのようだ。
(さわりてぇー)
カミトは大の動物好きで、その生物を見てから無償にもふりたい衝動に駆られている。
(もふりたい、いやでも、あーもふりたい、いやいやでも)
謎の生物ということで頭の中で理性と衝動が激しくせめぎあっていた。
(ぐあーーーーーー。…………ふう)
せめぎあいの勝者が決まった。
カミトは生物に手をかけるとそのフサフサした毛に顔を突っ込んだ。
そのまま顔を擦り付けるように謎の生物をもふり始めた。
「くーーん!きゃん!きゃん!きゃん!」
さすがに目が覚めたようで全力で逃れようと足をバタバタしている。
それでもカミトのもふりは止まらず、その後3分ほどもふり続けた。
謎の生物のバタバタしていた足もぐたっとしていて、子供にもみくちゃにされた子犬みたいになっていた。
「くーーん……」
力のない声を聞いて、ようやくカミトの理性が戻ってきた。
「あっごめん……」
これが少女版カミトでよかった。男版カミトならとんでもない図になっていただろう。
カミトの手から逃れた謎の生物はさささと1mくらいの距離を取り、「ふしゃーーっ!」と威嚇のポーズを取っていた。
「ごめんよー昔からかわいい動物を見ると……本当にごめんよー」
「しゃーーー!」
謝罪しながら近寄ろうとすると謎の生物も距離をとった。
(これは第一印象最悪だな……とほほ)
動物好きにとってこれは辛いだろう。
(そうだ。焼き貯めしたキノコ食べるかな?)
カミトは収納からキノコを取り出すと、1つを謎の生物の前に放り投げた。
「くーん?」
謎の生物は警戒しながらもキノコに近寄っていき、小さい口でかじった。
「くーん!くーん!」
どうやら口に合ったようで、あっという間に食べ終わってしまった。
「くんくーん」
謎の生物は少し警戒心をとき、カミトに近づいてきておねだりをしているかのようにカミトを見て鳴いた。
「おーそうかそうかまだまだあるからいっぱい食べな」
収納から焼きキノコを追加で取り出し、今度はしゃがみこんで、手渡しであげてみた。
すると警戒心を解いてくれたのか手に持っていたキノコを食べてくれた。
(うーん。名前ないのは不便だよなー)
謎の生物をそう思いながらじっと見つめていると、視線を感じたのかカミトの目をじっと見て、「くーーん?」と鳴いた。
「よし君の名前はウールだ!」
安直な名前だとは思ったが、同時にぴったりの名前だと思った。
すると謎の生物改めウールは嬉しそうに「キャンキャン」と鳴いているみたいだった。
するとウールの体から鎖が飛び出し、カミトの心臓に刺さった。
(うっ!なんだ……?)
痛みはないものの心臓が熱くなるような感覚がカミトを襲った。
鎖は心臓に刺さると金色の粒子のようになって、霧散していった。
ウールはカミトの前におすわりしていた。
(何が起こったんだ?)
疑問に感じていると頭の中に声が響いてきた。
「ご主人!ご主人!聞こえる?」
「誰かいるのか!?」
辺りを見回してもカミトとウール以外に人影は見えない。
「ご主人こっち!こっちだよ!」
(こっちってここには俺とウールしかいないよな……もしかして!)
「ウールなのか?」
「うん!そーだよご主人!」
「これはもしかして念話か?」
前ちんちくりん女神が使っていたのを思い出した。
「うん!そうだよ!ご主人と契約したから使えるようになったんだよ!」
「契約?もしかしてさっきの鎖のことか?」
「うん!僕に名前を付けてくれたでしょ?僕嬉しくてご主人と契約しちゃった!」
俺はステータスと念じた。
カミト ハナブシ(女)17才 人間
Lv.1
HP 100
SP 100
MP 50
魔法 なし
スキル 鑑定、収納、念話(契約)
ユニークスキル ???
装備 [火生みの祭杖]
祝福 数学の祝福(差)
契約 霊魂契約【ウール】
呪い 転換の呪い
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