第10節 激レアアイテムはチャッカマンになりました。
[火生みの祭杖]というアーティファクトを手に入れたカミトは早速周りに落ちている枝葉を集め、火を作ってみることにした。
使い方は祭杖に触れた時に、頭の中に流れ込んできている。
カミトは祭杖を片手で握り胸の前に持ってきた。
「火よ!灯れ!」
カミトはまだ知らないが、今唱えた言葉は火魔法の最初のひとつ〔トーチ〕の詠唱である。
二節詠唱〔トーチ〕
小さな火を灯す魔法。
[火生みの祭杖]には3つまで魔法登録をすることができるようだ。
魔法登録のできる道具は珍しくはないが大体は1つまで登録でき、魔法のランクも決まっている。
また登録したい魔法を覚えていることも条件となってくる。
[火生みの祭杖]は登録できる数も3つあり、魔法のランクも高位まで登録出来るみたいだ。
登録された魔法はMPさえ足りていれば使うことが出来る。
祭杖に登録されていた魔法は〔トーチ〕の他。
三節詠唱〔癒しの炎〕
八節詠唱〔滅火神楽〕
三節詠唱〔癒しの炎〕は骨折程度の怪我を治すことが出来る。
八節詠唱〔滅火神楽〕はMPが達していないために効果を知ることは出来なかったが、多分これがここら一帯を焼き尽くした魔法なのだろう。
普段ならもっと興味を持つのだろうが、今のカミトは〔トーチ〕以外には興味が無いようでせっせと火起こしをしていた。
「よっしゃーついたー!」
カミトは早速収納からキノコを取り出すと枝に刺し、焼き出した。
キノコの焼ける香ばしい匂いが漂ってきて、焼けるのを待つ時間が苦痛でしかない。
キノコからヒタヒタと汁が溢れ出してきた。
(そろそろいいかなぁ)
顔を見るすべがないので分からないが少女の顔は満面の笑みで溢れているだろう。
キノコに十分に火を通すとカミトはキノコにかぶりついた。
当然すごく熱いがカミトは「ふぁふっふぁっふ」と言いながらキノコを一瞬で平らげた。
数秒の沈黙のあとカミトは「うめぇーーーー!」と森中に響くくらいの声で叫んだ。
「俺がいつも食ってた松茸よりも香りも味も段違いにうまい!」
カミトは感動していた。
それはそうだろう。
どこにでもある中流家庭で育ったカミトはエリンギを松茸と言われ長年食べさせられてきた。
エリンギは意外と細かく刻むと松茸に見えないこともないのだ。
カミトは母の戦略に見事はまっていたのだ。
そんなことを知らないカミトはこのそこら中に生えているこのキノコをお腹いっぱいになるまで食べたのである。
お腹いっぱいになりカミトは仰向けになっていた。
するとさっきまでと周りが違っているのに気づいた。
先程まではどこまでも同じ景色が見えていたが、今は数メートル先が見えないほどまで霧が迫ってきていた。
カミトは立ち上がると焼き貯めしたキノコをしっかりと収納に入れ、攻撃に使える魔法はないが一応[火生みの祭杖]を構えた。
霧は抵抗のできないカミト達を一瞬にして飲み込んだ。
(くっ何も見えない……)
周りが霧だらけになり、何も見えなるとカミトは知らず知らずの間に目を閉じてしまった。
しばらくしてカミトが目を開けると霧はキレイに無くなっていた。
すると目の前には祭壇のようなものがあり、木の根がカミトとその祭壇を囲むように、円形に絡み合っていた。
イメージ的には木で作られた闘技場のようにも見える。
(ここはどこだ?)
カミトはそう思いながら中央にある祭壇の上を見る。
(あれはなんだろう……)
祭壇は揺りかごのようになっており、その上には見たこともないような生物がすーすーと気持ちよさそうに眠っていたのだった。
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