第9節 第1異世界人(骨)発見!

昨夜初めての転換を経験し、少女カミトは悩んでいた。


(このままじゃ動きずらいな……)


何せ、体が2回りくらい小さくなってしまったので元々来ていた服がブカブカになっていたのだ。


ブレザーは脱いで収納にしまい、シャツの袖をまくった。


(肌着を着る派の人間でよかった……)


カミトが直にシャツを着る人間だったら、どこかの薄い本に書かれていてもおかしくない服装になっていただろう。


スボンは裾を近くに落ちていた、伸び縮みするゴムのようなツルで足首に縛った。ダボダボとしたどこかの民族衣装のような格好だが少しは動きやすくなった。


同様に前髪もツルで邪魔にならないように縛った。


(よし!動きやすくなった。)


カミトは立ち上がると今まで感じていた空腹感がなくなっていることに気づいた。


(そうか……肉体を入れ替えてるからか……)


肉体を転換したことにより、転換前の空腹や疲れ

が一時的にリセットされたのだ。


気分が晴れやかになったカミトは、こうしちゃいられないとばかりに森をまた探索しようとしていた。


何故ならばまた明日になり男の身体に戻ってしまうと一時的に無くなっていたあの空腹感が再び訪れてしまうからだ。


(何としても今日生で食べられそうなものか、火を入手する方法を考えなくては……)



♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



しばらく歩いていると今までとは違った光景が見えてきた。


今まではコケだらけの岩か、木の根かのどちらかに覆われていたが、その一角は木や岩がない更地のようになっていて、所々がガラスのように固まっていたのだ。


(なんでこの一角だけ?)


カミトは疑問に思いつつも近づいていった。


近くまで来るとその開けた地面の中心に何かある。


(ん?ここからじゃ見えないな……)


さらに近づいて行くとそこには神に祈りを捧げるような形をして、座り込んでいる人間の骨があった。


(……!!)


カミトは言葉にならないくらい驚いていたが、時が止まったように崩れることのない、まるで骨格標本のようになってしまった人物の手に握られているものに目がいった。


(何だあれは?)


それはまるで盃に持ち手をつけたような形をしていて、まるでオリンピックの聖火リレーにつかられるトーチのようだった。


カミトはそれをもっと詳しく見ようと、手をかけた。


するとそのトーチのようなものは青白く発光し、頭の中に自然と使い方が流れ込んできた。


[火生みの祭杖]

アーティファクト

火を作り出す。


使うMPに応じて火力が変わる。


火魔法の媒介として使うと様々な火を作ることが出来る。


(ナイスタイミング!火が欲しい状況でこのアイテムはありがたい!)


火が入手することができ、喜んでいたカミトだが、この祭杖のもう一つの効果に目をやる。


(様々な火を作り出す?)


確かにこのアーティファクトは火を作ることができる。


しかしこのアーティファクトの本質は火魔法の媒介により、色々な火を作ることができるという所だろう。


この白骨標本のようになってしまった人物はここで何らかの事態が起こったのだろう。


仲間を守るためなのか、最後の抵抗だったのか、何らかの儀式なのかは分からないが、自身の命を削り火の温度と威力を高めのだ。


その結果としてあたり一面の木や岩などが全て瞬時に灰やガラスにかえられたのだろう。


そのため他の木などには燃え移らずに済んだのだと考えられる。


深く考察をしていくカミトであったが、何にせよ。


カミトは念願の火を起こす手段を獲得することが出来たのだ。

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