巧い。読み終えたあと、素直にそう思った。
個人的にホラーの基本とは「暗い」「せまい」「孤独」「正体不明」だと思っているが、今までカクヨム内で読んだ多くのホラー作品には、最後の「正体不明」をていねいに描けている作品があまりなく、恐怖の余韻をあまり感じさせてくれなかった。
しかしこの作品は違う。
短い文字数なのに「闇とは何か」を問う深い洞察のもと、人間が本能的に怖れ、そして決して理解し得ない“正体不明な”闇そのものが、密やかに寄り添ってくる。
だからこそ、彼は闇に見入られたのだろう。そこには孤独な者のみが気付くことの出来る郷愁/望郷のぬくもりがあったのではないか、と私は思う。