VRMORPG セレリティオンライン

MEGU

第1話 プロローグ

 二千百年冬。 日本上空に大寒波が襲来し、全国的に大雪となった。 後に、この異常気象を『CLO』の呪いと語り継がれる事となる。

 『CLO』VRMORPGセレリティオンラインの略。

 VRゲーム界の巨匠藤山太郎氏と、新規参入したオンラインゲーム会社エーアガイツの十年構想によって鋭意制作されたオンラインゲームである。

 制作発表当初藤山は語った。

<セレリティオンラインは、間違いなく世界のトップに立つゲームとなります。 MO型として制作している理由は、巨大都市を一つだけ用意し、そこから色々な出会いと色々な冒険へと旅立ってほしいからです。 もう暫く皆様お待ちください>

 全世界のVRゲーマー達にとって、藤山のたったこれだけの説明で十分であり、たったこれだけの説明でも涙を流した。 それだけこのセレリティオンラインへの期待は全世界をも包み込み、日本VRゲームトッププレイヤー達の心も奪われる事となっていく。 この事から、全世界で異常な状況・異常な状態を『CLO』の呪いと囁かれる事となった。 


 都内の高校に通う、二年生十七歳の佐藤早真。

 彼もまた、セレリティオンラインのβテストの日を、中学一年の頃から待ち続けていた一人だった。 彼こと佐藤早真には、一般プレイヤーにはない特別な特権が有った。 それは、早真の父親である佐藤人也がエーアガイツの社員としてゲームに大きく関わっていた事に有る。 実は幼少の頃早くに母親を亡くし、事ある毎に父子で口喧嘩が絶えず、人也が勤めているエーアガイツに早真のその矛先が向いたのが、中学一年の頃であった。 βテストを待ち続けるにはやはりそれなりの理由が必要だった、中学一年の早真には簡単に直視できる理由、エーアガイツが鋭意製作中だったセレリティオンラインを使っての復讐が真っ先に浮かんだ。

 そして、その復讐とはセレリティオンラインでトップを取る事――。 

 中学一年ゲーム好き男子が考えるには、最も近い道であっただろうし、最も手に届く位置付けにその時有った。

 何故なら早真は、中学一年の頃には既にVR系ゲームのほぼ全てでトッププレイヤーに名を連ね、全世界でその名を知らぬ者は居ないと言われる程のプレイヤーだったからだ。 知らぬ所でそのような復讐が生まれるとは、人也も気づく事はできず、その復讐心は高校二年まで大きく育つ事となる。

 その理由、早真だけの特別な権利――。

『……父さんが……母さんを殺した』

 この思いを胸に、早真は一人復讐を決意し、それを一人だけの特権とした――。


 二千百年冬。 『CLO』VRMORPGセレリティオンラインβ始まる。


 肩まで伸びた金色の髪。 シャープに揃えられた金色の眉毛。 真っ赤に燃える様なピアスが両耳に。 ワイルドな出で立ちだが細身の体型の青年がそこに居た。

 町並み周囲を見つめるその鋭い目に、人々は少し下を向き他所を向いた。

 そして、その青年は少し笑った。


 

 

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