第32話 ストーカー?
来美は朝から憂鬱な気分になっていた。二日酔いとか、結婚の悩みとかで憂鬱になっているわけじゃない。
昨日からというもの、なんだか誰かに見られている気がする。
昨日部屋に入ってからも、誰かが窓を覗いているように感じたり、朝の出勤中も誰かにつけられているような気がしたり……。そして今も、窓が気になる。
来美は窓に視線を移す。外でゴンドラに乗った窓拭きをしているお兄さんがいた。
まったく見たことのない人だった。来美は清掃の人まで疑いたくなっていた。
昼食時、来美は仏頂面でバーガーを食べていた。
「どうしたんですか?」
ポニーテールで髪を束ねた女性、
「え?何が?」
「いえ、さっきから周りを凄く気にしておられたので」
海嶋はためらいがちに言う。
「あー……」
「最近浮かない表情が多いですね。社長」
鮫島の表情は相談乗りますよと語りかけてくるような気がする。
来美は少し迷って、口を開いた。
「いや、たぶん気のせいだと思うんだけどー」
「なんですか?」
海嶋は少し食いついているようで、姿勢が前のめりになっている。
「誰かにつけられてる気がする……」
海嶋と鮫島は来美の言葉を聞いて固まる。目を見開き、来美を見つめている。
すると、海嶋と鮫島は体をひねって、あからさまに周りを見回し始める。
「怪しい人はいなさそうですけど」
海嶋は訝しげに言う。
「ストーキングされてるってことですか?」
鮫島は声を潜めて聞く。
「もしかしたらってだけだから、確証はないのよ」
来美は深刻に受け取られている気がして、大したことじゃないかのように振る舞う。
「誰か心当たりはないんですか?」
「それがないんだよねぇー」
来美はテーブルに肘をつき、額に手を添える。
「いつからつけられてるんですか?」
「昨日の夜から」
「他に何かされたんですか?」
海嶋と鮫島は来美を質問攻めする。
「家の中を覗かれてるかもしれないな、くらいかな?」
「それらしき人は見てないんですか?」
「それが見えないのよねー。周りに警戒しても、全然姿が見えないからなんか怖いなぁと思ってさ」
「それ、警察に相談した方がいいんじゃないですか?」
海嶋は心配そうに言う。
「でも、気のせいって可能性もあるからさぁ。それでただの勘違いでしたってなったらただの自意識過剰な女になるじゃない?そしたらめっちゃ恥ずかしいし」
「あー、確かにそうですねぇ。つけられてる気がするってだけですもんね」
鮫島は真剣に考えている。
「1人で帰らない方がいいんじゃないですか?」
「もしよかったら送りますけど」
「いや、そこまではいいから。他の人に頼むわ」
「そうですか?何かあったら言って下さいね」
「うん、ありがとう」
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