酸いも甘いも
第11話 結婚の良さ
1月も後半になった。去年と大して変わりない平凡な日々が続いている。そう言いたい。
来美個人の境遇としては、足音を立てて変わっている。
彼氏の関係もさることながら、仕事では
しかし、休憩は大切だ。中に篭って作業漬けしたって効率は悪くなるし、良いデザインが出るわけでもない。こんなに頑張ったんだからいい作品だなんていうのは自己満足に過ぎない。作業の背景を言わなければ誰も同情しないし、商品の説明にその話を入れてもお客さんが気に入るデザインかどうかは別の問題だ。
来美は従業員たちに手を休めるように言い、何人かの従業員と共に近くのラーメン屋に向かった。ラーメン屋はこじんまりして、女性客が入りにくいイメージがあったが、ここは綺麗で明るい内装をしている。周りも女性客ばかりで、メニューも女性が好きそうな品揃えが多い。
先にメニューが来てしまって、食べづらそうにしている新人の子に「気にせず先に食べて。麺が伸びちゃう」と促しつつ、昼食会が始まった。
ラーメン屋では麺をすすらない女の子が多い。啜る力がなかったり、ラーメンの汁が飛んで自分の服についてしまうなどの理由が多い。
来美は普通に啜って食べている。無料の漬物もちゃっかりいただいて、手慣れた様子で食事をしている。
来美がボーっと食事をしていると、結婚している従業員の話になっていた。
「鮫島さん、結婚して何が良かったですか?」
鮫島の後輩が悩ましい表情で尋ねている。ポニーテールに髪をまとめた女性、
しかし、最近彼氏からプロポーズされ、迷っているらしい。その話を聞かされた来美は、私への当てつけなのだろうかと神様のイタズラを恨んだ。
胸を差す話に、来美は聞き耳を立てる。
「うーん、やっぱり安心感があることかな。1人で悩む必要がないし、誰かが家にいるっていいものよ。家で役割ができて、2人で協力してる一体感っていうの?あとー家族でテレビ観て、一緒に笑ってる時間もいいなって感じるのよ」
彼女は2人目を出産した1年後、来美の会社に入った。生活と仕事の両立を入念に話し合い、彼女の今の生活がある。
「もし都合をつけたいことがあれば遠慮なく言ってほしい。最大限努力するから」と、来美は鮫島を快く受け入れた。家族の微笑ましいあったかエピソードを聞くと、自分のことのように嬉しくなる。
まだ幼稚園の子供が熱を出した時は休み取らせ、学校の行事などがあれば休める時は休んでもらっている。家庭がある人にはできるだけ無理をさせないようにしている。
もちろん、
しかし、来美も迷える子羊。社長という立場はあるものの、結婚に関しては鮫島より後輩だ。
来美は山本と一緒に真剣な表情で話を聞く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます