第4話 結婚のイメージ
松本と金井の目の色があからさまに変わった。
「マジで!?」
「それで、なんて返事したの?」
2人は前のめりになって来美を問い詰める。
「返事は待ってほしい……」
来美は2人の期待にそぐわない回答だと感じ、小さな声で答えた。
「「は?」」
2人は思わぬ回答に固まっていた。
「なんでえ?」
「彼氏に不満でもあるの?」
2人は捲し立てる。
「だってぇ~」
来美は眉を
「なに?」
「結婚とか、考えられない」
「いい彼氏でしょ?爽やかで優しいし、やり手のゲーム会社の部長。お給料もかなりの額が見込める!どこに不満があるってのよ?」
松本は理解できないといいたげに来美を問いただす。
「彼に不満はないわよ」
来美は鬱陶しそうに言う。
「じゃあなんで?」
金井は静かに尋ねる。来美はテーブルに頬杖をつく。
「結婚に憧れがないの」
「強がってない?」
松本はニヤつきながら来美に聞く。
「強がってませんー!」
来美は大きな瞳を更に大きくして言い張る。
「結婚に憧れがないってどういうこと?」
金井は親身な様子で聞き出す。
「ほら、結婚すれば幸せになれるっていうのが漠然とあるじゃん?絶対アレ嘘だって思うんだよねぇ。結婚して幸せになるんだったら離婚するカップルがいるわけないじゃん」
「それはアレだよ。性格の不一致ってやつでしょ」
松本は箸先を上下させて答える。
「だったら付き合ってるうちに分かっとけって話じゃん。そんなことも分からないくせに結婚するなんてあり得ないし」
松本と金井は来美のやさぐれ感に苦笑する。
「そういうもんじゃないの?恋愛って」
「恋は盲目って言うしね!」
松本は金井に同調する。
「恋は盲目ねぇ~」
来美は鼻で笑う。
「じゃあ来美は、彼氏と性格が合うって思ったら結婚するんでしょ?」
金井はほうれん草のおひたしをシャキシャキいわせながら訊く。
「するわけないじゃん」
来美は眉を
「何が嫌なの?好きな人と一緒に生活できるんだよ?ドキドキじゃん!」
来美は松本のテンションの上がりように冷めた視線を送る。
「恋愛は刺激的で楽しいけど、結婚は生活っていうのが入ってくるでしょ。家庭を保つために、お金や家庭での役割、お互いの嫌いなところも見えてくる。些細なことで喧嘩もするかもしれない。2人で共同生活していれば、お互いに譲れないことがわんさか出てくる。
そんなことでいちいち話し合うのもめんどくさいし、言わないでおこうと思って我慢してたら何もかも嫌になってきて、結婚生活が苦痛になる。それが延々と続いていったら相手が不倫してたりっていうこともあり得る。ああ……考えてたら頭痛くなってきた」
来美はテーブルに肘を付いて額を押さえる。
「結婚への拒否反応が凄いね」
金井は若干引いていた。
「一回結婚してみたら?もし無理だって思ったら離婚すればいいんだし」
「他人事だと思って……」
来美は松本の軽いノリに不服そうな顔する。
「でも、断るの?プロポーズ」
金井は真剣な表情で聞く。
「そこなんだよなあ~!」
来美は悩ましく唸る。
「保留にしたってことは、迷ってるんでしょ?」
金井は優しく語りかける。
「迷ってるっちゃ迷ってるけどー、いざ言われたら断れなかった」
来美は口端を歪める。
「あんまりもったいぶってると、変なことになるかもよ」
「変なことって?」
「ストーカーになっちゃうとか?」
「ないない」
来美は半笑いで主婦のように手をスナップさせて左右に振る。
「携帯に来るよ~。返事まだかな?僕はいつまでも待ってるよ。
2日後。お仕事お疲れ様。結婚の話、考えてくれた?みたいなメールの間隔がだんだんだんだん短くなっていって、遂には!くるみーの自宅に侵入!」
松本は来美を脅かして面白がる。
「やめてよ気持ち悪い」
来美は妙な肌寒さを感じ、乾いた口を潤そうとビールを飲む。
「とにかく、早く言ってあげなよ。相手に結婚願望があるなら、変に時間を使わせてるのも良くないよ?」
金井は優しく意見を言う。
「そうだよね。うん、私言います!」
来美はグラスに残ったビールを一気に飲み干し、テーブルに空のグラスを強めに置く。すると、強めに呼び鈴を押した。
「おーし!今日はとことん飲むぞーーー!!」
「しょうがないなあ!付き合ってあげよう!親友!」
松本も来美のテンションに同調する。
「私についてこーい!」
3人は飲みに飲んで、馬鹿みたいに騒ぎ立てた。
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