3.実験総括

 最後に、さらっと今回の企画を総括しておきます。なお、エントリーされた個々の作品には触れません。なぜか。わたしが主催者ではなく提案者として各作品にさせていただいたコメントは、全てわたしというフィルターを通して見た印象に過ぎないからです。そして、本企画は改稿のプロセスを公開し読者に見てもらうというのが主旨。わたしの印象を、だらだら垂れ流してもしょうがありません。


 説明文にも書きましたが、文章を編むという作業には絶対基準がありません。巧拙をどのように評価するかも含めて、読者は作者以上にわがままなんですよ。どんなに素晴らしい文章でも、その読者の好みに合わなければそれまでです。ですから、わたしがどのような提案を行っていても、それを全て印象として捉えていただきたいなあと。

 改稿後に一切コメントしなかったのも、同じ理由です。わたしの提案が活かされたにしても棄却されたにしても、改稿には提案によるバイアスがかかります。そこからわたしが受ける印象にも、同様にバイアスがかかってしまうんです。その歪みを抱えたまま評価や再提案をしたくなかったんですよ。わたしのわがままではあるんですが、そういう姿勢で臨んでいたということを書き記しておきます。


 今回わたしの提案は、メジャーからマイナーへという流れで行いました。最初に作品を読んだ時の全体印象をもとにして文章の骨子に関わる重要提案を掲げ、次に表現方法やレトリックにかかる部分を提案し、最後にマイナーな部分に触れています。

 逆に作者さんは、マイナーなものから順に手を入れてもらえば心理的な拒否感が小さくなるかなあと。マイナーからメジャーに向かうにつれて読者(提案者)の印象が大きくばらつくので、オリジナリティを保つための改稿妥当性の検証がシビアになります。そういう観点から、もう一度改稿のプロセスを見つめていただければ幸いです。

 改稿のレベルは、いろいろあっていいと思います。寄せられた提案の背景にあるのが各読者の率直な印象だとすれば、自分の文章のどこが効果的で、どこが不十分だったかが見えてくるんじゃないかと。そのギャップを埋めるように改稿できれば、スキルアップにつながる……そんな風に考えています。


 最後に一言。自作になにか反応が寄せられることは、それがいかなる形であっても嬉しいことです。もっとも厳しい評価は無視なのですから。本企画でいかなるやり取りがあり、どのように受け止められたにせよ、それらが真摯にブラッシュアップに向けて行われたということ。それだけは、はっきり明記しておきます。


 ご参加くださったみなさん、企画参加作をお読みくださったみなさんに、改めて深く感謝したいと思います。拙い企画にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。


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ナマケモノ企画のまとめレポート 水円 岳 @mizomer

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