第2話 ロリ魔王のお話 その1
「我が城……って言われてもなぁ……」
そう言いながらおれは周囲を見渡した。
しかし何処にも城のような建物は見当たらず、少女の周りにも少女が座っている椅子しか存在しなかった。
「城どころかもはや建物すら見当たらないんだが……」
おれがそう言うと少女はククッと笑った。
「お主のような凡俗から見れば、そのように写っても致し方ないのであろう。まあよいわ」
何やら含みのある言い方だったが、結局何処ら辺が城なのかは教えてくれなかった。
そしてもう一度椅子に座りなおし、少女は口を開いた。
「ではお主に色々と説明してやろう。まずここはお主が先ほどまで居った場所とは違うところじゃよ。お主に分かりやすく言うと、ここはそうじゃな……。魔界といったところか」
「魔界ぃ……?」
なんだか一気に胡散臭さが増した気がする。
脳裏に知らぬ間に少女のごっこ遊びに付き合わされて居るのではないだろうかという考えがよぎる。
しかしその考えはその後即時に否定されることになる。
「まあとはいってもいきなり魔界だと言われてもあまり信じられんのじゃろう。わかりやすい証明をしてやろう」
少女はそう言うと指をパチンッと鳴らした。
すると少女の目の前に魔法陣のようなものが現れ突如として光り出した。
そしてその魔法陣から一人の女性が現れたのだ。
「……!?」
アニメや漫画でしか見たことのない光景に思わず目を疑う。
マジックか何かか……?
「おっと、マジックなどではないぞ。言い忘れて居ったが、ワシは読心の能力も持っておるのでな。お主が何を考えようが筒抜けじゃ」
人の心を見るのが楽しいのか、少女はまたククッと笑う。
「……わかった。君の言ってることを信じるよ」
おれがそう言うと少女は満足したようにカカッと高らかに笑った。
「あぁ……。そういえばまだお主に名乗っておらなんだな。ワシの名はアイラ・ベル。この世界の魔王じゃ」
「……。」
……嘘くせー。
「おいお主。また嘘くせーなどと心の中で失礼なことを考えておるな」
そう言われおれは手を全力で振り、慌てて否定する。
「ふん。読心能力を持つこのワシの前で堂々と事実を否定するとはなかなかに図太い神経をしておるの」
まあ良いわいと言い、自称魔王の少女は話を続けた。
「まあこの姿ではそう思われても仕方のないと言うものじゃ。まあこの話は置いておくとしよう。次にこやつじゃ」
少女はそういいながら先ほど魔法陣から召喚した一人の女性を親指で指差した。
そして指さされた女性はゆっくりこちらへと歩いてきた。
その女性は少女とは違いとても大人びたお姉さんという雰囲気を纏っていた。
赤い唇は色気を漂わせ、歩くたびに豊満な胸が揺れ動く。
腰まで届く黒色の髪は、清楚な雰囲気を漂わせる。
どこか青みを帯びた透き通った綺麗な瞳はまぶたの隙間からこちらの顔を覗いていた。
長身に加え、細身のそのスタイルは、もはや男の理想像のようだった。
そして身を包むメイド服のような格好が、どこか現実離れした美しさを表現していた。
女性はおれの目の前まで来て、おれにぺこりと腰を曲げてお辞儀をした。
「アイラ様の侍女悪魔であるマリアでございます。これからはあなた様のお世話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」
「……え?は、お世話?」
マリアと名乗る女性の言葉を信じられず思わず聞き返す。
「はい、これから大望を叶えていただくアリマ様のフォローをさせていただきます」
「おい自称魔王。大望ってなんなんだよ。聞いてないぞ」
おれがそう聞くと、自称魔王は怒ったようで、椅子から立ち上がり腕を組み、先ほどまで座っていた椅子の手すりに足を乗せて踏んづけた。
「お主こそ魔王に向かってなんという口の利き方じゃ。せめてマリアのようにアイラ様と呼べ」
「わかったよ。アイラ」
おれがそういうと、マリアはどこから取り出したのか、物騒な剣をおれの首元に当ててきた。
「それ以上アイラ様を侮辱すると私が何をするかわかりません……。ご注意を」
「は……はい」
侍女悪魔こえぇ……。
「いや、マリア。もういいわい。好きに呼ばせておけ」
アイラがそう言うと、マリアは首元に当てていた剣を引っ込めた。
た……助かった。
「それでじゃアリマ。お主がここに来た理由。それこそがワシの、そしてお主の大望を果たすためじゃよ。ワシらの手で我が魔王軍を完全復活させるのじゃ」
「……へ?」
魔王軍復活……?
「いや、おれそんなこと叶えたいと思ったことないんだけど……」
というか魔王軍復活とは一体どういう意味だろうか。話がさっぱりつかめない。
「気にするでない。今から否が応でもお主は魔王軍を復活させなければならぬようになるんじゃからのう」
そう言うアイラの口はニヤリと笑っていた。
まものがかり @corne
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