まものがかり

@corne

第1話 プロローグ

四月某日。

春休みも終わり、これから桜舞い散る学校に新高校二年生としておれこと有馬正和(ありま まさかず)は向かっていた。

友達と呼べるものはいても、親友と呼べるものはいない。

きっとおれの周りの評価は、「面白くないやつではあるが、一緒にいて不快ではないやつ」程度のものなのだろう。

しかしおれも自分のことが面白いやつだと思ったことはないし、なんとも平凡な男だと自覚しているので、その評価はきっと概ね正しいのだろう。

自転車をこぎながら風で流れてきた桜の花びらを踏みつける。

おれはこの時期が嫌いじゃない。学生服を着て空に舞う桜を眺めていると、なんだか不思議と晴れやかな気分になってくる。

そんなことを思いながら自転車のペダルをより強くこぐ。

次の角を曲がれば学校の正門が見えてくるという所で不可思議なことが起こった。

角を曲がる直前、なにやら自分の真下の地面が青白く光りだしたのだ。

「ん?んなっ!?」

そのまま地面は眩しくて目も開けられないほど強く光り、奇妙な感覚とともにおれの意識は遠のいた。


「……んっ……」

一体どのくらい意識を失っていただろう。

数時間?1日?どのくらい時間が経ったか全くわからない。

どうやらおれはどこかに倒れこんでいるようだった。

体から伝わってくる感触からして、どうやら土の地面に倒れこんでいるようだ。

そのまま土の上に倒れこみ続けるのもあまり気分がいいものでもないので、体を起こし目を開ける。

「……なんだここ……?」

目を開けるとそこは青春感の溢れる桜舞い散る道路……などではなく、なにやら薄赤暗い見たこともない場所だった。

よく見ると足元の土も真っ黒な色をしており、空の色も相まって不気味さが滲み出ていた。

「ようやく起きたか。長かったのう」

そんなことを考えているとき、突然聞いたこともない声が飛んできて、すぐさまそちらの方を向く。

するとそこには、1人の少女がアンティーク調の大きな椅子に座って踏ん反り返っていた。

年齢は12歳くらいだろうか。黒色の長髪はツインテールで括られており、頭にはねじれたツノのようなものがちょこんと髪から出てきていた。真紅の瞳がおれの目をまっすぐ見据えていた。

黒を基調としたゴスロリの服装はこの少女に妙にフィットしていた。

可愛く整った顔とその服装から、天才子役かなにかかと思わされたが、口元を歪ませた邪悪な笑みが、その可能性を完全に払拭させる。

「あんまり長く寝ているものじゃから、もう死んでしまったのかと思ったぞ?」

その容姿と年相応のかわいらしい声からはあまり似つかない喋り口調だったが、不思議と違和感のようなものは感じなかった。

「どこなんだ……?ここは」

「今お主が思っておる疑問は今からまとめて説明してやるわい。……その前に」

そう言いながら少女は椅子からぴょんと飛び立ち上がり、おれを見下ろしながら腰に手を当てこう言った。

「ようこそ。我が城へ」

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