曙の大地
犬井ハク
止まった時計/生まれ変わる世界の片隅にて
形見の懐中時計を手の中でもてあそびながら、退屈そうな――どこかぼんやりとした表情で、【
約束とも言えぬ約束の時間は、あの大戦の終った日から半年後、すなわち大陸暦2847年10月3日の午後ちょうど。場所は四人の英雄が失われたこの町、ディリタージェの物見塔の下。
約束を一時間ほど過ぎたが、二時間前から待っていても、見知った姿がアスレラの視界に写ることはなかった。彼が佇む町の一角は、午後の慌ただしさとあいまって、まるで祭りのような賑やかさだ。
ほんの半年前まで激しい戦火と破壊のただ中にあったこの場所も、今ではすっかり喧騒を取り戻し、人々の活気にあふれ返っている。アスレラから少し離れた位置で行われている市は、たくさんの売り手とたくさんの買い手でごっちゃになっている。
夕食の材料を仕入れにきた娘たちのまとう、鮮やかな赤や青の衣装が、まだ強い力を宿した陽光にもまぶしく輝き、自由と平和を高らかにうたっている。露店商人たちの使い込んだ外套、気の強そうなおかみさんたちのまとう色とりどりのショール、それら当たり前のすべてがアスレラにも戦いのない喜びと今への感謝を与えてくれる。
野菜や果物、乳製品や肉製品、香辛料や調味料、調理されたおかずや菓子、自家製のワインやエールを売りさばく、露店商人たちのかしましい――活き活きとした声が響き渡るのを聴いていると、アスレラの唇にもゆっくりと笑みが浮かび上がってくる。
多大かつさまざまな犠牲を払って、十年余も続いたかの大戦がようやく終息し、世界に穏やかな日常が戻って半年。
決定的な――致命的な歪みを抱えたままの世界ではあれ、そしていまだ復興中の、つぎはぎだらけの世界ではあれ、その中で単純だが懸命な毎日を送る人々が、ああやって楽しげな声を響かせている様は、光の守護者たる【晧騎士】として【茜の勇者】スーイィリーリュに付き従い、平和のために身を削って戦ったアスレラへの褒美のようにも思えるのだ。
「あんたのやったことは正しかった、スーリュー。あんたのいのちが、あんたが望んだ世界を守ったんだ……」
アスレラは、片方だけになってしまった鮮やかな空色の目を手元に落とし、【茜の勇者】の形見である懐中時計に向かってつぶやいた。宝光銀と竜水晶を使って作られた、月と蝶の繊細な細工の施してあるそれは、むろん、何も応えはしなかったが。
「だから俺は、この『いま』を、尊ぶ」
腰に巻きつけた荷袋の一部分に、いとおしむようにそっと触れる。
純白の、絹糸のようだとスーイィリーリュがいつも褒めていた髪が、涼しい秋風に吹き散らかされて踊る。
彼の手の中にある、小さな懐中時計はもう動かない。
アスレラにとって、彼自身のいのちなどとは比較にもならないくらい大切だった、友であり師であり父であり兄であった男が、己の役目を終えて死んだとき、その瞬間に秒針をあわせたままで動きを止めた。
それすらもスーイィリーリュの遺した言葉のような気がして、アスレラは時計を直せずにいる。
水晶時計がようやく普及してきた世の中ではあるが、彼の手にしているような小型の、更に細工入りのものは非常に貴重だ。なにせ、一国の王が、己の威信を見せ付けるためにつくらせるような代物なのだから。
この懐中時計は、【茜の勇者】スーイィリーリュの功績を称え、某国の王が特別に作らせて与えたもので、【茜の勇者】の一番の気に入りだった。
文字盤に埋め込まれた、竜水晶の透き通ったさまが、宝光銀で施された月と蝶の細工に映えてとても美しいと、見るたびに目を細めていたくらいなのだ。竜水晶といえば竜の骨が地中に永いこと埋もれることで宝石になったもので、小指の先ほどの大きさでも家が一軒建つといわれるほど貴重な代物だ。
それだけ貴重なものなのだから、壊れたままにしておくのは職人にも失礼だとアスレラも理解はしているのだが、今のところしばらく、この時計が再び動き出すことはないだろうとも思っているのだ。
情けない、軟弱なことだ、と自分でも判ってはいるのだが。
苦笑してアスレラはつぶやく。スーイィリーリュの朱金の髪と、知性と友愛に満ちた夜空色の瞳を脳裏に思い起こしながら。
「今ごろあんたは何をしているんだろうな……? シュロウやデルフ、アユナルもそっちにいるのか。あんたたちはあんたたちで、気ままに楽しくやっているのか……」
冥界などという、生者の思いの及ばぬ場所でのことではあれ、今はもういない、誰よりも愛したものたちが、せめて幸いであればと願う。願うことしか出来ぬ、己自身が恨めしいのも事実だが。
どうしようもない思考を振り払い、アスレラは懐中時計を懐にしまうと、来ぬ待ち人に心を残すのは諦めて市場へと足を踏み入れる。ひとりで行くとなれば、出立の時間を誰かに左右されることもないし、食べ損ねていた昼食でも仕入れようかと思ったのだ。
喧騒と様々な音、様々な匂いに満ち溢れた市場の中で、アスレラは好みの食物を探して歩き回る。どうせ先を急いでいるわけでもないのだ。
子どもの頭くらいあるパンにこってりとしたクリームと蜂蜜を詰め込んだもの、分厚いハムとチーズと玉葱の薄切りを挟んだパン、塩で漬け込んだ鮭の炙り身を中に詰めた握り飯、豚のひき肉と五種類の野菜を包んで蒸しあげられた饅頭、甘辛く煮たきのこと筍と鶏肉をもち米に混ぜて蒸しあげた粽、米の粉からつくられた麺をたっぷりの野菜と鶏ガラのスープで食う白汁麺など、東西南北の大陸の文化が流れ込むこの地ならではの多種多様さで、市場は食の楽しさを――生きる喜びを謳っている。
食い物を物色するアスレラに気づいた人々が、なにごとかを囁きかわしているのが彼自身にも判ったが、知らないふりで買い物を続行する。彼自身、周囲のそう言った反応には慣れている。
先の大戦における功績で、【晧騎士】アスレラの名と顔は、この中央大陸を遠く離れた極北島にまで伝わっているほどなのだ。【茜の勇者】スーイィリーリュ、【
本人にはそのことへの自負はなく、誇るでも卑下するでもない。
腰に佩いた白貴鋼の剣、【晧騎士】のあかしたる流麗なそれと均しく、アスレラにとっては当然のことなのだから。
アスレラにとっては【晧騎士】であることそのもの、【晧騎士】である自分に何が出来るかが大切なのであって、その大切なことは、富や名声とはまったくもって関係がない。
それは、呼吸と同じく、ごくごく自然の摂理であり、【茜の勇者】がすでに亡いこの世界であっても変わりはしないのだ。かの英雄が望み、いつくしんだ世界を護る、ただそれだけのことなのだ。
「まあ、今のこれだけで、報われたって気はするよなあ。みんな、笑ってるもんなあ」
あまりに旨そうなものが多すぎて小一時間迷った挙げ句、あたためた細長いパンに真ん中から切れ込みを入れ、バターを塗って、そこに玉葱のみじん切りと特大の豚の腸詰を乗せた調理パンを銅貨で贖い、腸詰にトマトソースと辛子をたっぷりかけてもらうと、アスレラは市場から少し離れた町の広場まで移動した。
移動途中に通りがかった果物屋でりんごのソーダを作ってもらう。
二十五歳にもなって恥ずかしい話だが、アスレラは一滴も酒が呑めないのだ――と、いうより呑むと寝る。
人々の憩い用にと据え付けられた長椅子に陣取って、遅い昼食を開始する。塩気と脂気が絶妙な腸詰に、こいつをつくった人間は天才だ、と感心しながら食っていると、
「人をお待ちですか、【晧騎士】様」
凛とした雰囲気の、背筋のピンと伸びた老爺が近づき、彼の隣に腰をおろした。見覚えのある顔に、アスレラは行儀悪くパンを齧りつつも記憶を探る。
「――ああ、思い出した、町長さんだったな。あんたもずいぶん老けたな、ここ半年で。……って、なんだ、俺、そんなに辛気臭いカオしてたかな」
言いながらりんごのソーダをひとくち啜る。もうすこし甘味が強いほうがいいなぁ、などと甘党のアスレラが思っていると、微笑した老爺が首を横に振る。
「辛気臭いかどうかはともかく、残念そうな顔をしておいででしたよ。言い交わした約束が果たされませんでしたか」
「んー……そだな、最初から約束とは思ってなかったかも知れないけどな、アイツらの場合。壮絶な天然バカだから」
ただ、戦が終わったとき――それぞれの大事な人がそれぞれの理由で死んだとき、すべての煩雑な事柄が片付いたら、愛した人の骨を故郷に返しに行く旅に、一緒に行かないかとアスレラが誘っただけだ。
返った言葉は気が向けば、という短いものだった。だから、半年後の正午にここでと言って別れた。他のふたりはどうか知らないが、アスレラはその言葉を支えにして今日までやってきた気がしている。
パンを食べ終えたアスレラは、口元を拭うと溜め息をついた。
「ま、俺が勝手に期待してただけ、かな」
ひとりになるのはあっという間なんだなぁ、と嘆息すると、ゆっくりと生々しい寂しさが這い上がってくる。未熟だと自分でも思うのだが、ひとりの寂しさを人一倍理解し、またひとりでいることを人一倍恐れるアスレラには、本当に残念で仕方がなかった。
とはいえ、荷袋にそっと納められた、【茜の勇者】の骨の存在は確かなもので、これを彼の故郷に埋めてやらねばならないことにも変わりはない。しかし、ずっと【茜の勇者】とふたりで旅をしていたアスレラにとって、ひとり旅というのはなんとも味気なく、面白くないものになりそうだった。
そんなことを考えていたアスレラの横で、終戦間近まで剣を取り、町の防衛線の最前で戦っていた老爺が、少々含みのある口調で言葉をこぼす。
「そういえば、つい先ほど、物見塔の近くで【
それを耳にしたアスレラの行動は速かった。椅子を蹴倒さんばかりの勢いで立ち上がるや否や、
「感謝するぜ、町長さん!」
いくつになっても少年っぽさが抜けない、とアーデルオーフィードにからかわれてばかりいたおもてに喜色をあふれさせながら、物見塔に向かって走っていく。まさしく風のような……という比喩がしっくりくる勢いで。
残された町長、激しい戦火から町を守り抜いた老爺はいたずらっぽい……やわらかい微笑を浮かべていたが、それはアスレラの目には入らなかった。
*
「遅いぞ、このクソ騎士! 貴様いつのまに遅刻するほど偉くなった!」
流麗なのに優雅さのカケラもない声とともに飛んできたりんごの芯が、駆け寄ろうとしたアスレラの顔面を強かに打ち、激しく出鼻を挫かれたかたちで、彼は物見塔の間近で呻きながらうずくまった。
「ナニ寝惚けてんだへぼエルフ! てめぇらが来ねーから昼飯食ってただけだろがよ……!」
感動の再会もクソもない展開に、更に言うなら片方しかない目にりんごの汁がしみて、半泣きになりながら抗議する。
が、
「寝惚けているのは貴様だ、フィアースレイリオラ。わたくしの遅滞が許されるのは当然だが、貴様が遅れるのは許されん。まったく……この【華姫将】ヴァ・イー・チェイカを待たせるとはイイ度胸だ。この貸しは高くつくぞ?」
鮮やかな薔薇を思わせる紅の髪と峻烈な炎を宿した夕日色の瞳、そして長く尖った耳と雪のような肌を持った女は、身も蓋もなく言い放つと、絶世の美貌に意地の悪い笑みを浮かべてアスレラを見下ろした。
「ナンの貸しだ、ナンの……」
押しに弱いアスレラは、その辺りですっかり脱力して、しゃがみこみながらつぶやく。
この、旧い友人(……と言っていいのかアスレラには非常に疑問だが)ヴァ・イー・チェイカは、“黄昏のエルフ”と呼ばれる珍しいエルフ族の女だ。もはや滅びに瀕した“
しかも百七十しか背丈のないアスレラと違い、チェイカは百八十五という長身で、彼女自身アスレラがそれに劣等感を持っているのを知っているものだから、いつもこうやって彼を見下ろしては喜んでいる。長命なエルフ族だけあって、アスレラの五倍は生きているという話だが、どうにも信じがたいほど大人げない。
【璃娟帝】アーデルオーフィード、かの大戦の中心地となったこの国の女帝たる人物の片腕にして二十年来の恋人でもあったチェイカは、その美貌と抜群の戦闘能力から【華姫将】と呼ばれ、腰に佩いた赤貴鋼の剣と同等に、国民からは尊崇を、敵国からは畏怖をもって知られている。
……はずなのだが。
あまりに変わりのないチェイカの姿に、半年間の葛藤だの懊悩だのが、一気に氷解していく。気を張っていた自分がバカみたいに思えて、はぁ、と溜め息をついたアスレラだったが、
「ふむ、息災だったようじゃな、【晧騎士】アスレラ。再びぬしと会えたは望外の喜びじゃ。ああ、遅れてすまぬ、向こうで少々残党狩りをしておったゆえ」
待ち人のもうひとりが、風のざわめきや水のささやきを彷彿とさせる、ひどく不思議な――しかしあたたかい声で言ったので、アスレラはようやく立ち直って顔を上げた。
「ああ……そうだったのか、気にしないでくれ。オレも嬉しいよ、【竜骸貴】トゥネ。あんたも変わりなさそうだ」
「幾とせ経ても変わらぬのが竜人ぞ。じゃが、変わらぬことをぬしが喜んでくれるなら、それも悪くはないものよの」
縦に切れた瞳孔のある、不思議な眼が細められる。
竜の骸のごとく、死してのちもなお貴き者。
そういう意味の飾り名を持つ人物は、濃い藍銀の鱗でところどころが覆われた、武骨で力強い手をアスレラに向かって差し伸べた。鉛色の爪は、人間のものというよりは大型爬虫類の鉤爪に近い恐ろしげなものだ。
「――そだな、俺はあんたたちが変わってなくて嬉しい」
一万年前、竜皇ヴァルルハーレイと人間の娘が愛しあい、その結果生まれたという竜人たちの国、竜王国セイトヴァーネ国王のいとこという尊い身でありながら、信念ゆえに王へと剣を向け、国を負われて流浪の身となった【竜骸貴】エリアトゥーネは、先の大戦でも【茜の勇者】や【璃娟帝】、そして【燈の舞巫女】を常に助けて世界の平安に尽力した人物だ。
無益な殺生を好まず、敵といえども決して残酷な行為には及ばないその性質から、トゥネが常に身に帯びる黒貴鋼の長槍と同等に、その名は思慕と憧憬を持って囁かれる。
人間やエルフたちと比べても格段に強い力を持ち、人間たちとは異なる外見をした竜人族の面々だが、先祖返りだというトゥネは、竜と交わった女の腹から生まれたという原初の竜人に近い。
尾こそないものの、やや青味がかった肌のあちこちを、美しい藍銀の鱗が飾っている。例えば首元や腕、手の甲、背の一部や、人間というより竜の後足に近いかたちをした足の甲などがそうだ。それは異形であるのに間違いなく整った顔も同じことで、先の尖った幅のある耳や、金の瞳孔のある水晶色の目の周り、かたちのいいおとがいなどもまた、光を反射している。
更に、先祖返りの顕著な例として、トゥネの背中には、頭頂で結い上げた髪の色と同じ、黒鋼色の大きな翼がある。もちろん空を飛ぶことのできる勇壮な翼で、不要なときは折りたたむことも出来るというから便利なものだ。
これで背丈が二百を越えていたら、完全に原初の竜人そのものだっただろうが、トゥネはアスレラより少し背が高い程度で、身体つきも原初の竜人たちに比べれば格段に華奢だ。決して弱々しいなどということはないが。
数千年を生きるという竜の血を引くだけあって、竜人はエルフよりもなお長命だ。トゥネも外見ならアスレラと同等に見えるが、実際には彼の十数倍は生きている。
「さて、【晧騎士】フィアースレイリオラ、光ある者の代弁者よ。これからどこへいくのじゃ? わしもアユナルの骨を彼女の故国へ届けてやりたいのじゃが、それへは同行してもらえるのかのう? ひとりは味気ないゆえな」
「そうだ。わたくしもデルフねえさまの御骨を、彼女の愛した極北島へ運んで差し上げねばならんのだ。それなのに、まず貴様の帰郷に付き合ってやろうという、心の広いわたくしを褒め称えろ。具体的には、額を地面にこすりつけんばかりに」
トゥネがのんびりと、チェイカが偉そうに言うのを聴きながら、立ち上がったアスレラはしばし呆然とした。――そう、ふたりが確かにアスレラを気遣っていることが、彼には判ったからだ。
チェイカが、ホンの一瞬、優しい微笑を浮かべる。
「貴様の別れが最も辛かったろう、それは魂を引きちぎられる慟哭であっただろう。そのくらいは判っておいてやる。だから最初は貴様に付き合おう、さあ、行き先を言え【晧騎士】よ」
「……チェイカ」
「早く言え、わたくしが短気なのは貴様もよく知っているだろうが。あと十秒以内に言わんとさっきのはなしだ。一、二、三、……」
感傷に浸る間もなく数を数えられ、やはり激しく脱力したアスレラは、なんともいえない気分で笑った。痛みと寂しさを伴ったままの心が、それでも少しずつ晴れていくのを感じながら、
「んじゃ、西大陸のディストーまで付き合ってくれ。スーリューはディストーからでしか行けない小さな島の出身なんだ」
ありがとう、なんて言ったら泣き出しそうな気がして、素っ気なく言う。
アスレラの内心を理解しているのか、ふたりは特に何も言わず、少し笑って頷いた。
「うむ、では行こう。時間を無駄にするのは愚か者だ。愚図愚図するのはアスレラでも出来る、ということわざもあるくらいだからな」
「そんなことわざこの世に存在しねぇよ!」
「おや? そうだったか? 貴様の記憶違いだろう」
チェイカの憎まれ口に律儀に反応しつつ、アスレラは腰の荷袋を確かめた。骨の入った箱の、硬い冷たい感触を。
あのときの身を切るような絶望と悲嘆を、アスレラは今でもはっきりと覚えている。
けれど、骨になる前の愛しいひとが、確かに生きろと言っていたから。
そして彼の目の前には、同じ痛みを抱いた親しい人々がいるから。
だから、アスレラはまだ生きようと思うのだ。
「ふむ……ディストーへ行くのなら、まずはケプラーを抜けねばなるまいのう。徒歩と船で……二月ほどかかりそうじゃな」
「トゥネの翼で一息に行けないか? 二月もアスレラと同じ道を歩いていたら馬鹿が移りそうだ。わたくしの高貴な頭が汚染される」
「それはこっちの台詞だ、脳腐れエルフ!」
「……ぬしらは仲がいいのか悪いのか判らぬのう……」
呆れた風情でトゥネが言い、それから吹き出す。
つられたようにチェイカが笑い出し、更につられたアスレラも笑う。
同じ痛みを抱えた近しいもの同士、馬鹿みたいに笑いながら、三人は新しい旅路に着く。
この旅が終わるころには、新しい世界が開け、新しい希望が芽生えているように、と、願いながら。
曙の大地 犬井ハク @inuhaku
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