火の玉

 小学生の時の話。

 エヌくんというやんちゃな子がいた。

 (中学校に入り、いじめの加害者として問題となった類の子であった)

 その彼がおふろに入っていると、窓から見える墓地に、火の玉が浮かんでいたとのこと。

 うわさは学校中に広がったが、ほとんどだれも信じなかった。

 注目されたいがためにエヌくんがついたうそと、多くの者は考えた。

 頭の良い同級生が、ガスかどうとか言っていたのをおぼえている。

 同じ時期に、私も近所の料理屋のまえで火の玉らしきものを見ていたのだが、まわりには黙っていた。

 黙っていた理由は、エヌくんの件だけでなく、もうひとつあった。

 その料理屋の主人が交通事故で亡くなったばかりで、その息子がひとつ下の学年にいたためである。

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