考えるな

 小学生のとき、水族館に、親戚と車で出かけた。

 駐車場から水族館に向かう途中で、叔母さんが前方を指差した。

 そこには、黒いタオルのようなものが落ちていた。

 近づいてみると、それは猫の死体であった。

 私がかわいそうにと思っていると、叔母さんが言った。

「猫は、自分をかわいそうにと思った人に取りつき、呪い殺すんだよ」

 私は、かわいそうじゃない、かわいそうじゃないと思いながら、猫のことを忘れようとした。

 しかし、忘れようと思えば思うほど、頭から離れなくなるのが人間である。

 気にならなくなるのに数日かかった。

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