チキュウ
錯視 堂
そう遠くない未来
「ここもだめか・・・」
「だめみたいですね。空気の割合は、炭素が約95%、窒素が約3%。その他酸素や水蒸気が微量に含まれているそうです。住める可能性はあったんですけどね・・・温度が低く、とても暮らせる状態ではなさそうです。」
「惜しいな。条件が合わないのはそこだけか。まあ、悔しいが仕方がない、次はきっと住める星が見つかるはずさ。」
少し気を落としつつも、彼はつづけた。
「しかし、ここら辺は恒星の周りを星が回っていて、我々の星の周りと状況が似ている。もしかしたら、ほぼ同じ環境の星があるかも知れぬ。見つけて、我々の故郷へ伝えようではないか。」
「そんなかんじのこと、もう何十回も言われましたよ。まあ、念のため探してみますけど。」
今から数百年後の世界。そこでは環境汚染や爆発的な人口の増加が起きていた。
そして、各国の研究者から、このままだとあと70年程で、全世界の人々の生活が困難になるとの結果が導かれていた。そこで、十機程の宇宙船を飛ばし、自分たちが住める星を探すことになった。
彼らも、その一つである。
「しっかし、なかなか住めそうなところはないなぁ。星を出てからもうどのくら
い経ったか分かるか?」
「そんなのをいちいち数えていたらキリがないからもう数えていませんよ。幸いにも食糧は十分すぎるほどありますし、ゆっくりさがしていきましょう。」
「ま、それもそうだな。よし、飯にするか。まあ、飯っていってもいつものサプリメントなんだけどな。」
「もう、サプリって分かっているんだからいちいち期待させることを言わないでくださいよ。まあ、別にサプリに不満はありませんけどね。」
たわいもない会話と食事を済ませた後、彼らは星の探索に戻った。
すると、突然彼は叫んだ。
「見つけました!!!」
「な、なにを見つけたんだ!?まさか!?」
彼は興奮を押し殺しながら答えた。
「まだ正確には調べていませんが、炭素が大半を占めており、酸素や二酸化炭素も含まれていて、さらに温度も良好な星が、ここから約3時間のところに存在しています」
「すぐにいって確認しよう。もしかしたら我々が世界の救世主になるかもしれぬ。」
彼らは、手を震わせつつもその星への移動を進めた。
そして、彼らはその星の周辺にたどり着き、調査をしたところ、本当に移住できる星であることが分かった。
「生命の存在も確認できない。これは実際に降りてみるとしよう。宇宙服を用意しろ、降船の準備だ。」
「了解です。」
「もうすでに朽ち果てた建物や文明がある。見るに同じ種族で殺し合いでもしたか
我々と同じ境遇になったかで絶滅したのであろう。」
「そうみたいですね。とりあえず、この星の詳細を計測します。・・・計測したところ、宇宙服がいらないほどに私たちの星と環境が似ているようです!!」
「それは本当か!早急に我々の星に伝えよう。我々はついに移住星を発見したのだ!」
「あー、あー、聞こえるか、こちら3号機、ついに我々パウル星人が住める星を発見した。星の名前はチキュウというらしい。至急返答求む。」
チキュウ 錯視 堂 @kajiara1221
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