最終話

あれから9日。

今日は離任式だ。

手紙とプレゼントを持って学校へ向かう。


体育館へ向かう途中、職員室前で目が合った。


式が淡々と始まって、安藤先生の登場には生徒たちが驚いていた。

私は親友の絵里と一緒に1番後ろに座りながら泣くのを我慢していた。


離任式が終わって、解散になった。

各自お世話になった先生のところへ行く。

私は迷わず安藤先生の元へ行く。


でもさすが人気な先生。女子生徒で溢れかえっている。

私が中々行けずにいたら隣にいた絵里が安藤先生の元へ行く。

話すわけでもなく、安藤先生が絵里の存在に気付くとすぐに私のところへ来てくれた。


空いている教室を閉め切って大きな教室に私と安藤先生だけ。


「千佳、俺さ浜松に異動になったんだ。」


「そっか。引っ越しあったでしょ。大変だったね。」


「うん。あのさ、千佳。これでお別れじゃないよ。

 生きていれば絶対また会えるから。また会いたいから。」


そういって「笑顔で別れよう」という約束は安藤先生から破った。


「泣かないでよ、あんどー。」


「ごめん、本当にごめん。」


「しょうがないな、いいよ許す。」


そういって私も涙がこぼれだす。


2人で泣きながら握手を交わす。


大きくて優しい安藤先生の手を握りながら


「もう大丈夫だよ。心配しなくて大丈夫、頑張るから。」


必死だった。たくさん言いたいことはあるのにそれしか出てこなかった。


「心配だよ、心配だけどお互い、頑張ろうな。」


優しく、強く握った手を離して、手紙とプレゼントを渡して2人で教室を出る。


「「じゃあ!またね!!!!」」


2人でそう言って「笑顔」で別れた。


ほんの5分。


でも今までで1番思い出深い5分だった。


「好き」という気持ちは伝えられなかった。

きっと安藤先生は気づいていたと思う。

でもきっと、今はまだ伝えてはいけない気がした。

次の機会にとっておこうと思った。後悔はしてない。





それから半年。



やっと来月、会えますね。



会えるの楽しみだよ、あんどー。


 

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高校教師に恋をした まる @marumaruchan

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