第16話 日本人が来たぞー!!! 最強最悪の傭兵集団だった日本人

1492年にコロンブスがアメリカ大陸に到達、1498年にバスコ=ダ=ガマがインドに到達します。

そして1522年にはマゼランが世界一周に成功。

本格的な大航海時代が始まります。

モンゴル帝国の大伸長に次ぐ、第二次グローバリズムの時代と言っていいでしょう。


その過程でスペインやポルトガルは行くさきざきに拠点を作ります。船と乗員を休めるため、そして香辛料で莫大な利益を上げるためです。


南アフリカのケープタウン。東アフリカのモザンビーク、そしてマレーシアのマラッカなどに根拠地がつくられました。


特に海路上の重要地だったマラッカは、マラッカ王国の後、ポルトガル領マラッカ、オランダ領マラッカ、イギリス領マラッカと何度も支配者が変わりました。


もちろんそれらの国が港や砦を作る前から、地元には高い文明と深い歴史を持った国々が存在しました。


当然のように衝突が起こります。


当時の東南アジアにあった主な王国としては島嶼部で以下のような国々がありました。


香辛料の宝庫だったモルッカ諸島を支配したテルテナ王国、東南アジアにアラブの文物をもたらしたアチェ王国、水上航路の要衝にあったマラッカ王国、ジャワ島中部の強国マタラム王国、ジャワ島西部のバンデン王国。


半島部では、元(げん)王朝の攻撃をはじき返したチャンパ王国、タイ族のアユタヤ朝、ビルマ人のトゥングー朝などです。


ところが、ポルトガルやスペイン本国から東南アジアは遠すぎます。軍隊を持って来ることは容易ではありません。


そこで傭兵が雇われました。

当時戦争慣れしていた民族とはどこでしょうか。

そうですね。戦国時代の真っただ中だった日本人です。


日本を出て東南アジアに渡った日本人たちは、戦争慣れした傭兵として300~500人くらいの数で様々な勢力に雇われました。


日本人傭兵は、頭の回転がよく(ずるがしこく)勇敢で(残虐で)恐れを知らない(しょうきではない)恐怖の傭兵として恐れられ、また引く手あまたでした。


なぜ日本人傭兵がこんなにもたくさん外国に出たのでしょうか。


それは当時の日本が大変に貧しい国だったからです。


室町時代の日本は天候不順が続き、農作物がうまく育ちませんでした。飢饉寸前だったのです。


そのような状態で、人々は隣の村を襲って食料や財産を奪い糊口をしのぎました。隣村を食いつぶすとまた隣村を襲いました。


こうしていくさは100年近く続きました。


これが戦国時代です。


人間、生活が苦しくなると戦争を始めるのです。それは今でも変わりません。


傭兵にとって戦場は職場です。

職場はなにも日本国内だけにあるのではありません。ある者は倭寇となって中国沿岸部を襲い、ある者は傭兵となって東南アジアで大暴れしました。


彼らは戦場で生まれ、戦場で育ち戦争しか出来ません。


日本国内で戦争が終わり、江戸幕府が成立して元和偃武が宣言されると、兵士たちは士農工商の身分制度の中で「侍」という身分を与えられ、形だけの兵士として静かな生活を送り始めました。


ところがそれが出来ない兵士たちはどうしたのでしょうか。


彼らは職場を求めて東南アジアに渡りました。

そこには彼らの職場と居場所がまだあったのです。

つまり戦場です。

その代表格が、日本人傭兵隊長の山田長政でしょう。この人物は西ローマ帝国を滅ぼしたオドアケルに似ています。

江戸幕府成立後も、東南アジアには日本人街が数多くありました。


彼らの中には信仰の自由を求めてゴアやマニラに渡った人々もいます。

果たしてそれだけでしょうか。

戦場で育った者には、戦争しかありません。


他の事が出来ないのです。


現在でも戦場帰りの兵士たちが再就職するには大変な苦労が伴います。

アメリカの映画「ランボー」や「アメリカン・スナイパー」はそういう作品でした。

悪名高き民間軍事会社は、戦場帰りの兵士を雇っては、戦場で生きのびた人間を再び戦場へ送り出します。

「アルプスの少女ハイジ」に登場するおじいさんは傭兵として戦争に行った後、自ら選んで孤立した生活を送っていました。


「傭兵」と聞くとかっこいいですが、実態はどうなのでしょうか。

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