第3話
梁さんは母親が再婚するまで貧乏暮らしだった。
六畳二間の家賃一万五千円という異様に安いアパートに、小学三年生まで住んでいた。当然低所得層が住むアパートだった。
「子供心に変だなぁ変だなぁって思ってたけど……」
そのアパートでは夕方になるときまって、住人全員が、部屋の表札を隠していたという。
「あれは何の為だったのか……理由は最後まで聞けずじまいで、お袋は逝っちゃったよ」
ただ何度も何度も念入りに「名を知られたら、いけんけん」と注意されたことだけは覚えているという。
子供のころ 三題 別府崇史 @kiita_kowahana
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